新型コロナ、渦中に放り込まれた米国の新米医師たち

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

救急治療室で働く研修医1年目のエマ・ロジャーズ氏。急速な感染拡大で不安に襲われることもあるが、地域の人々が病院に支援の手を差し伸べてくれたと話す。フィラデルフィアにあるペン・プレスビタリアン医療センターの外で撮影(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

ビッキー・ジョウ氏は、2019年の大みそかを救急治療室で過ごした。と言っても、患者としてではない。27歳のジョウ氏は、医師になって1年目の研修医として、米ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学病院の救急治療室に勤務していた。いつものように8時間のシフトを終えると、真夜中に打ち上げられる年越しの花火を見るため、友人の家へ急いだ。

「ぎりぎりで間に合いました」というジョウ氏が、友人宅の屋上で高層ビルと花火の眺めを楽しんでいたとき、中国の武漢では全く新しいウイルスが静かに活動を始めていた。そして新しい年、新型コロナウイルスの年が幕を開けた。

「救急治療室の医師が特殊なのは、どんな患者でも全て受け入れることです」と、救急医療研修医1年目のビッキー・ジョウ氏は言う。「あなたが誰であっても、どんな症状を訴えてきても、私たちは全力で治療に当たります」(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

たとえ世界的な感染症の流行という危機がない状態だったとしても、医学生から研修医になるというのは大きな変化だ。米国における研修医とは、大学卒業後に4年制のメディカルスクールを終了した見習い医師のことを言う。

「最初の6カ月間が特に大変です。研修医は、馬車馬のように働かされます。朝は誰よりも早く出勤して、全てをノートに書きとり、みんなの注目を浴びるなかで、上司である医師に報告をしなければなりません」

ジョウ氏が少しずつ仕事に慣れ始めた頃、中国の新型コロナウイルスは、じわじわと感染が拡大していた。誰もがそうするように、ジョウ氏も新聞の報道を追っていた。上海に住む祖父母から、現地の様子も聞いていた。「でも、ここからははるか遠く離れていました。2020年1月の時点では、私の働いている病院では影響は見られませんでした」

それが今、ジョウ氏をはじめ多くの新人医師たちが、100年に一度というパンデミックの真ん中に突如として放り込まれている。

ナショジオメルマガ
注目記事
次のページ
患者を診ながら実地で学ぶ
ナショジオメルマガ