映画が現実に 小惑星衝突を防ぐNASAのアイデア

日経ナショナル ジオグラフィック社

「二重小惑星でなければ、高い精度で測定することは基本的に不可能です」と、米ローレンス・リバモア国立研究所のミーガン・ブラック・サイアル氏は言う。「本物の小惑星に宇宙船を衝突させる技術の有効性を確認する絶好の機会です」。氏は、地上での実験とスーパーコンピューターでのシミュレーションの両方を用いて小惑星の衝突モデルを作っている。

DARTは時速2万キロメートル以上の猛スピードでディディムーンに衝突するが、その直前に、イタリア宇宙機関が制作した靴箱サイズのカメラを放出する。このカメラが、衝突の際に飛び散る破片やクレーターの写真を撮影して、衝突の一部始終を記録する。ジョンソン氏は、この衝突によりディディムーンの約12時間の公転周期を7分ほど短くできるかもしれないと言う。研究チームは、70秒以上変えることができればミッションは成功したと評価できるという。

「ディディムーンの軌道が変わっても、ディディモスの軌道は変わりません」とジョンソン氏は言う。「ディディモスは潜在的に危険な小惑星なので、軌道を変えたくありません。手違いでおかしな方向に動かしてしまうようなことがあってはならないのです」

2026年には、欧州宇宙機関(ESA)の探査機ヘラがこの二重小惑星のもとを訪れ、衝突の影響を詳細に測定する計画になっている。

サイアル氏は、小惑星に宇宙船を衝突させる戦略はよく練られているが、首尾よく小惑星の軌道を変えられるかどうかはいくつかの変数に左右されると指摘する。標的となる天体の組成、強度と構造、衝突により放出される物質の量、宇宙船が突入する角度などは、どれも重要な要素だ。

「最悪の結果は、水面に石を投げて水の上をはずませる水切り遊びのように、宇宙船が跳ね飛んだ場合です。小惑星に伝わる運動量が小さくなってしまいます」と、サイアル氏は言う。

とはいえ、ディディムーンのように小さな小惑星なら、宇宙船を衝突させて軌道を変えることができるだろう。それでは1998 OR2のように大きな小惑星だったら? ここまで大きい小惑星が地球に向かってくる場合には、小惑星の表面で核爆弾を爆発させて一部を蒸発させることで軌道を変えるなど、もっと大胆な戦略が必要になるとルー氏は言う。けれども核爆発を利用するこの方法には、バラバラになった破片がなおも地球に向かってしまうリスクがある。

危険な小惑星を発見するための専用の宇宙望遠鏡を打ち上げようと取り組んでいるメインザー氏は、最良の回避戦略は、飛来する天体と、衝突までの残り時間によって決まると言う。どのやり方が有効かを知るためには、実際に試してみるしかない。

「少しの準備で大きな違いが出てきます。私たちはそのことを、気候変動や、今回のパンデミックや、地球防衛問題で思い知らされているのです」とメインザー氏は言う。

(文 Nadia Drake、訳=三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年5月7日付]

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