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映画が現実に 小惑星衝突を防ぐNASAのアイデア

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ナショナルジオグラフィック日本版

2020年4月29日、巨大な小惑星が地球から約630万キロメートルのところをかすめていった。「1998 OR2」と呼ばれるこの天体の直径は約2キロメートルもあり、地球に衝突するようなことがあれば、直径10キロメートルものクレーターができ、大気中に舞い上がった塵で世界は薄暗くなったはずだ。

「非常に大きな小惑星です」と、小惑星の探知と惑星防衛の専門家である米アリゾナ大学のエイミー・メインザー氏は言う。「恐竜を絶滅させた小惑星よりは小さいですが、容易に甚大な被害を及ぼすことができるサイズです」

小惑星が地球の近くを通過することは意外に多い。1つの都市に大ダメージを及ぼせるサイズの小惑星は、地球から800万キロメートル圏内を毎年数十個もかすめている。1つの大陸に壊滅的な被害を及ぼす程度の大きさの小惑星も、平均すると毎年1、2個は通過している。

いつの日か、1つの都市、あるいはそれ以上の範囲を消滅させるほど大きな小惑星が地球に向かってくるのはほぼ確実だ。そのときにまだ人類が存続していると思うなら、地球を守るための計画を立てておくのが賢明である。米航空宇宙局(NASA)が2021年に宇宙船を打ち上げて、危険な小惑星を阻止する最初の実験を行おうとしているのは、そのためだ。小惑星が地球から十分遠いところにあるうちに宇宙船を衝突させて、その軌道を変えようというのである。

「DART(ダート)」というこのミッションは、正式名称を「Double Asteroid Redirection Test(二重小惑星方向転換試験)」と言い、お互いのまわりを回っている二重小惑星の小さい方に宇宙船を衝突させる。小さい方の小惑星の軌道が少しでも変化すれば地球から容易に測定することができ、計画の成否が明らかになる。

「エキサイティングな時代になりました」と、NASAの引退した宇宙飛行士で、小惑星の探知と回避を目的とする非営利団体である「B612基金」の設立者エド・ルー氏は語る。「DARTはすばらしいデモンストレーションになるでしょう」

潜在的に危険な小惑星は2078個

危険な小惑星を阻止するには、まずその存在を見つけなければならない。NASAの惑星防衛局長リンドリー・ジョンソン氏は、「太陽系には無数の小惑星があるので、長期的に観測・監視する必要があるものを見きわめる必要があります」と言う。現時点では、潜在的に危険な小惑星は2078個あるという。

1998 OR2は、4月29日に地球から約630万キロメートルのところ、すなわち地球から月までの距離の約16倍のところを、時速3万キロメートルの猛スピードで通過していった。心配するような距離ではないが、1998 OR2は3.7年の周期で太陽のまわりを公転していて、火星の外側の小惑星帯まで遠ざかった後、地球の軌道の内側まで戻ってくる。次に地球に接近するのは2079年だが、今回よりもっと近く、地球から約180万キロメートルのところを通過すると予想されている。

NASAは、直径140メートル以上で、地球から800万キロメートル以内のところを通過する小惑星を、潜在的に危険な小惑星と見なしている。「800万キロメートルという数字は、将来地球に衝突するおそれがある天体を確実にとらえられるように、時間経過にともなう軌道の変化を考慮しつつ、少し余裕を持たせて決められました」とジョンソン氏。

7年後には、直径約3キロメートルの「1990 MU」という大きな小惑星が地球から約460万キロメートルのところを通過する。

「これは、衝突されたくない大きさですね」とジョンソン氏は言う。「私たちの最も重要な仕事は、地球に近づいてくる小惑星を片っ端から見つけてカタログを作ることです。どんなものが見つかっても驚きません」

1998年、米国議会はNASAに対して、直径1キロメートル以上の潜在的に危険な小惑星の90%以上を発見して調べるように指示した。その7年後には、直径150メートル以上の小惑星の90%以上を見つけるようにと指示を修正した。

1998 OR2や1990 MUのような大きめの小惑星が地球に衝突した場合、生物に壊滅的な被害を及ぼす可能性がある。米パデュー大学の地球物理学者ジェイ・メロシュ氏は、「直径1キロメートル以上の小惑星が衝突した場合、1つの大陸の全体に被害が及び、大気中に舞い上がった塵により世界的な寒冷化が起こり、数年間は不作が続くでしょう」と言う。

大きめの小惑星はこれまでに約900個見つかっている。これは予想されている数の95%に相当し、今後数世紀の間に地球に衝突しそうなものは1つもない。しかし、米国の国家科学技術委員会の報告によれば、都市レベルの被害をもたらすおそれがある小さめの小惑星は、約2万5000個と予想されている総数のうちの約30%しか見つかっていない。

「小さめの小惑星については、これからです」とメインザー氏は言う。「黒々とした宇宙を背景に灰色や黒い色の岩を探すのは非常に難しいのです」

直径150メートル未満の小惑星であっても、非常に危険なものになりうる。地球の大気中で爆発すれば核爆弾並みの威力になる。2013年にロシアのチェリャビンスクの上空で爆発した小惑星がそうだった。小惑星の直径は20メートル程度だったが、超音速の火の玉となって大気中を落下する際に衝撃波を生じ、建物のガラスが割れて約1500人の負傷者を出した。これだけの被害をもたらした小惑星の接近に誰も気づいていなかったのだ。

小惑星を迎え撃つ

小惑星が地球に衝突するのを阻止する上で最も重要になるのは、危険を察知するタイミングだ。準備の時間が数年から数十年あれば、大きい小惑星の軌道でも変えうるだろう。

NASAのDARTミッションでは、地球に接近してくる小惑星に、米ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所(APL)が建造する重さ500キログラムの宇宙船を衝突させる実験を行う。2021年7月に打ち上げられる予定の冷蔵庫サイズの宇宙船は、2022年10月、地球から約1100万キロメートル離れたところで直径約780メートルの小惑星ディディモスに接近する。ディディモスのまわりには「ディディムーン」と呼ばれる直径約160メートルの小惑星が周回している。

DARTの標的は、小さい方のディディムーンだ。この大きさでも、地球に衝突すれば都市を消滅させるおそれがある。ディディムーンの周回時間の変化は地上の望遠鏡でも測定することができ、これにより宇宙船衝突の影響を見積もることができる。

「二重小惑星でなければ、高い精度で測定することは基本的に不可能です」と、米ローレンス・リバモア国立研究所のミーガン・ブラック・サイアル氏は言う。「本物の小惑星に宇宙船を衝突させる技術の有効性を確認する絶好の機会です」。氏は、地上での実験とスーパーコンピューターでのシミュレーションの両方を用いて小惑星の衝突モデルを作っている。

DARTは時速2万キロメートル以上の猛スピードでディディムーンに衝突するが、その直前に、イタリア宇宙機関が制作した靴箱サイズのカメラを放出する。このカメラが、衝突の際に飛び散る破片やクレーターの写真を撮影して、衝突の一部始終を記録する。ジョンソン氏は、この衝突によりディディムーンの約12時間の公転周期を7分ほど短くできるかもしれないと言う。研究チームは、70秒以上変えることができればミッションは成功したと評価できるという。

「ディディムーンの軌道が変わっても、ディディモスの軌道は変わりません」とジョンソン氏は言う。「ディディモスは潜在的に危険な小惑星なので、軌道を変えたくありません。手違いでおかしな方向に動かしてしまうようなことがあってはならないのです」

2026年には、欧州宇宙機関(ESA)の探査機ヘラがこの二重小惑星のもとを訪れ、衝突の影響を詳細に測定する計画になっている。

サイアル氏は、小惑星に宇宙船を衝突させる戦略はよく練られているが、首尾よく小惑星の軌道を変えられるかどうかはいくつかの変数に左右されると指摘する。標的となる天体の組成、強度と構造、衝突により放出される物質の量、宇宙船が突入する角度などは、どれも重要な要素だ。

「最悪の結果は、水面に石を投げて水の上をはずませる水切り遊びのように、宇宙船が跳ね飛んだ場合です。小惑星に伝わる運動量が小さくなってしまいます」と、サイアル氏は言う。

とはいえ、ディディムーンのように小さな小惑星なら、宇宙船を衝突させて軌道を変えることができるだろう。それでは1998 OR2のように大きな小惑星だったら? ここまで大きい小惑星が地球に向かってくる場合には、小惑星の表面で核爆弾を爆発させて一部を蒸発させることで軌道を変えるなど、もっと大胆な戦略が必要になるとルー氏は言う。けれども核爆発を利用するこの方法には、バラバラになった破片がなおも地球に向かってしまうリスクがある。

危険な小惑星を発見するための専用の宇宙望遠鏡を打ち上げようと取り組んでいるメインザー氏は、最良の回避戦略は、飛来する天体と、衝突までの残り時間によって決まると言う。どのやり方が有効かを知るためには、実際に試してみるしかない。

「少しの準備で大きな違いが出てきます。私たちはそのことを、気候変動や、今回のパンデミックや、地球防衛問題で思い知らされているのです」とメインザー氏は言う。

(文 Nadia Drake、訳=三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年5月7日付]

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