人間に遭わない… 福島立入禁止区域で増える動物たち

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/5/30

人が去った地域に動物が多数、福島

11年3月、東北で大規模な地震と津波が発生し、チェルノブイリに次ぐ世界で2番目の規模の原発事故を引き起こした。福島第一原発では、浸水による停電で3基の原子炉がメルトダウンし、周辺の海岸線で放射性降下物が確認された。全体で、原発周辺の1150平方キロの区域で、約16万人が避難を余儀なくされた。

放射線汚染と人の立ち退きが福島周辺の野生動物に与えた相対的な影響を調べるため、米ジョージア大学の野生生物生態学者ジム・ビーズリー氏とヒントン氏らのチームは、原子力発電所跡近くの120カ所にカメラトラップを設置し、16年から17年に2カ月間の調査を2度行った。

福島第一原発の立入禁止区域で撮影されたタヌキ(PHOTOGRAPH BY JIM BEASLEY)

調査地は、3つの区分から選んだ。当面の間は立ち入りが完全に禁止されている場所、当初は立ち入りが禁止されたが現在は少し人が戻ってきた場所、類似の環境で人が居住している場所の3種類である。

その結果、イノシシやニホンザル、タヌキなどいくつかの種は、人の立ち入りが許可されていない地域で最も多く見つかった。全体として、動物の数にかかわる最も重要なファクターは、生息環境のタイプと立入禁止の状況であり、放射線レベルの高さではなかった。

「こうした汚染された地域でも動物は生存できるというのは、皮肉なことです」とビーズリー氏は話す。手つかずの広大な野生生物保護区の方が動物にとっては良いのだが、調査結果は、動物が放射線下でも多数生息できるということを示している。

チェルノブイリにも多くの動物が

1986年、ウクライナのプリピャチにあるチェルノブイリ原子力発電所の原子炉が爆発、大規模な火災が発生して周辺地域に放射性物質を撒き散らした。これにより、現在のウクライナとベラルーシにまたがる広大な地域が立入禁止区域に指定された。この地域からは10万人以上が強制避難させられ、いまだ戻ることは許されていない。

過去20年以上にわたる調査から、チェルノブイリの立入禁止区域には、場合によっては近くの自然保護区に匹敵するほど多彩な動物が数多く生息していることがわかっている。だが、放射線が動物に与える影響という点では、それぞれ調査結果が異なる。

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