「異才発掘プロジェクトROCKET」という名の活動がある。東京大学先端科学技術研究センターが日本財団と共同で14年にスタートした。ユニークな才能をもちながら不登校などに悩む子どもを、社会につなげていくことめざしている。

「自分みたいな人がたくさん」

プロジェクトの対象となったひとり、山下ひかるさんは16歳。まだ小学生だった4年前に選ばれた。選抜を受けたきっかけは、小学校の担任の先生のすすめだった。

「学校にまったくなじめない子だった」と語る山下ひかる

「学校にまったくなじめない子だった」と自分でも思う。1時間目は算数、次は国語と次々に切り替わる日課についていけなかった。注意されるまで、終わった科目の教科書を見続けていたこともある。「教室に立てこもったことも、廊下の突き当たりに自分の席を作って、ずっといたこともある」

才能は豊か。幼いころから好きなピアノで作曲し、キノコ研究に没頭し、マンガを上手に描いた。映像作り、プログラミングと興味は広がり、パソコンで制作したアニメに自作曲までつけた。「マンガは同級生が回し読みしてたし、自分のアニメ作品を家で紹介しようとしたら、同級生が30人くらい来ちゃった」という。仲良しというより「ちょっと変わった子」。そんな扱いだった。

ROCKETは月1回程度、地方の現場リサーチや、ある分野のトップランナーによる講演など、様々な企画を用意している。山下さんは、こうした機会を通して初めて同世代の友達ができたと感じた。「学校だと、ほかのみんなができていることに合わせなきゃと焦っていた。ここには自分みたいな人がたくさんいる。これでいいんだと思えるようになった」

いま最も力を入れているのがドラマ制作。脚本から撮影、劇伴音楽、演出、衣装、ロケ場所の選定や交渉まですべてこなす。ROCKETの仲間が手伝い、出演してくれる。作品は自分のホームページで公開する予定だ。こうしたスキルを生かし、すでに映像制作やウェブ制作の仕事も始めている。

19年春から通信制のN高校に在籍しているが、なかなかカリキュラム通りに学習が進んでいないと明かす。そしてひと言つけ加えた。「高校に普通に行っている子たちに、今でもすごい憧れがあるんです」

ROCEKTで子どもたちをサポートする福本理恵さん(右)は「居場所は大切。でも、そこが『いつまでも出て行かなくていい場所』になってはだめ」と話す

ROCKETプロジェクトリーダーの福本理恵さん(東大先端研特任助教)は話す。「居場所は大切。でも、そこが『いつまでも出て行かなくていい場所』になってはだめなんです」。自分が認めてもらえる場所、必要とされる場所をまずみつけ、自分が果たせる役割を知り、社会とつながっていく。ROCKETはそんな場でありたいと福本さんは願っている。

(藤原仁美)

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