コロナと共生する時代 産業医が提案する新しい働き方こちら「メンタル産業医」相談室(41)

日経Gooday

リスクの高い人と低い人とを分けて徐々に緩和していく

5月14日には、政府が緊急事態宣言を39県で解除すると発表し、外出自粛を撤廃する動きが進んでいます。今後、この流れは首都圏、関西圏含む全国で進みます。ここで前述した知見を踏まえつつ考えられることは、リスクの高い人の外出はできるだけ控えてもらいつつ、従業員の年齢および健康診断結果や自己申告を元にリスクが低いと考えられる人から順に出社していくようにするというものです。

60歳以上の高齢者や基礎疾患のある人、長期にわたるヘビースモーカーの人には、ワクチンができるまでは、できるだけ外出を控えて人との接触機会を減らし、引き続きリモートワークを継続してもらう。リモートワークがどうしてもできない人には、ラッシュ時の出勤時間を避けたり3密環境を徹底的に避けた環境で仕事をしてもらうことで感染を予防する。病気の状態が悪い人は休職して社会的支援を利用してもらうことも検討するとよい思います。(併せて政府にも新型コロナ関連に関する傷病手当金の支給基準の緩和、期間延長などの柔軟な対応を検討してもらいたいと強く思います)。

学校においても同様に、基礎疾患を持つ子供や青年にはリモート授業の機会をもれなく提供し、かつ高リスクの高齢や病気を持つ教員はリモート授業専従にするといった手もあると思います。

先に自粛を緩めて経済活動や社会生活を始めた新型コロナウイルスに強い層の人たちは、とにかく睡眠(最低でも6時間以上)と栄養(タンパク質、野菜類、適度な炭水化物)をしっかりとって、心身ともに過労にならないように心がけることが大切です。残業は最小限にして、休息とリラクゼーションをしっかりとり、ストレスをためないように心がけることで免疫状態を良好に保つことが可能です。免疫力が良好である限り、新型コロナウイルスに強い世代は感染しにくいことはもちろんのこと、もし感染しても重症化するリスクは低く抑えられると考えられます。こちらについては前回の連載(「新型コロナ、ストレスの春の防衛策 睡眠は6時間以上」)で詳しく書いていますので、ぜひ参考になさってください。

それと同時に先に自粛を緩めた人たちは、(3)「周囲の人を感染させない、重症化させない」という配慮をするのは大前提です。例えば職場や街では常にマスクを着用し、老人と接する際には、必ず社会的距離(できるだけ2メートル、最低でも1メートル)をとるように心がける。基礎疾患者に関しては見かけでは判別できないため、マタニティーマークのような外から見てもわかるように何らかのバッジを身に付けていただくと距離をとることができるので国が配布してくれることを筆者は強く望んでいます。

また新型コロナウイルスに高リスクな人と同居している方でどうしても仕事や学校に行かざるを得ない場合は、居室を別にする。タオルや食器を共用しない。家庭内でもマスクをする。共用部分は定期的にアルコール消毒するといった対策をより厳重に実践してください。万が一体調不良が発生した場合は、政府から推奨されている「ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと ~8つのポイント~」の自宅隔離基準を参考にしてもらえば、家庭内感染をさらに強力に予防することができます[注6]

上記のような形で新型コロナウイルスに強い世代から経済活動を再開させつつ、コロナに感染しない工夫を行う。もし感染しても免疫状態を良好に保つことで重症化を防ぐ。そして新型コロナウイルスに弱い層である60代以上の老人と基礎疾患者に感染させないように守る対策を行えば、問題となっているICU崩壊も医療崩壊もかなり防ぐことができます。

ワクチンが完成するまでの期間を上記のような年代別リスクに応じて対策しながら自粛を緩和していけば、経済や教育、スポーツ、文化活動を壊滅的に衰退させることなくウイルスと共存していけるのではないかと産業医として考えるわけですが、いかがでしょうか?

[注6]https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf

奥田弘美
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内約20カ所の産業医として働く人を心と身体の両面からサポートしている。著書には『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想(めいそう)の普及も行っている。

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