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コロナと共生する時代 産業医が提案する新しい働き方

こちら「メンタル産業医」相談室(41)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

世界的に勃発したコロナ騒動で、今年の春は全く精彩を欠いた寂しい季節となってしまいましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 精神科医・産業医の奥田弘美です。

さて世界を震撼(しんかん)させた新型コロナウイルスですが、様々なデータや研究結果が集約された結果、いよいよ世界でも日本でも、コロナウイルスと付き合いながら経済を再開していく動きが始まっています。

例えば日本よりはるかに多い死者約8000人を出しているドイツは、5月6日付の政府声明においてマスクの着用義務や社会的距離(1.5メートル)の確保を継続しながらも、レストランや商店を含めたすべての店舗に人数を制限したうえでの営業再開を認めました。またすべての子供たちの学校再開が夏に向けて順次行われていきます。プロサッカーリーグの試合再開も認められ、5月16日から無観客で行われています。

そのほか欧州最悪の何万という死者を出したイタリア、スペイン、フランスもロックダウンを解除し段階的な経済再開を決定しています。

これらの国と比べても、死者数感染者数とも圧倒的に少ない日本(763人:5月18日公表分)でも、東京や大阪といった特定警戒都道府県以外は非常事態宣言が解除され、徐々に会社、店舗や学校の再開が始まりました。

これら世界的動向を見てもわかることは、いくら厳しい自粛を続けてもこれだけ感染力が強く世界中にまん延しきった新型コロナウイルスをゼロにまで撲滅するのは不可能であるということです。実際、散歩すらダメという強力ロックダウン政策を実施したフランスでさえも、感染者数を減らすことができませんでした。韓国は一時期ウイルスの抑え込みに成功したように報じられましたが、規制を緩和したらとたんにクラスターが発生しました。

徹底的な強固な自粛を行えば一時的に感染者は減るかもしれませんが、解除すれば再び感染者は増えてきます。また自粛期間が長引くほど経済的被害は拡大し、中小企業の倒産・労働者のリストラが相次ぎ、経済的困窮から自殺や犯罪などが増える可能性があることも、この緊急事態宣言中に私たちは痛切に体験しました。

こうした悲劇的な犠牲を伴う国民総自粛という荒療治を経た結果、われわれ人類は、いかにこの新型コロナウイルスと付き合いながら「生活の基盤となる経済」を回し、教育や文化、スポーツといった「人間らしい文化的生活」を維持していくかがこれからの対策の焦点となっていくのは言うまでもありません。

幸いにも日本国内でのデータ分析の結果、「感染すると高確率で死に至る恐ろしい殺人ウイルスではない」ことが明らかになってきました。

日本では神戸、大阪で集団に対して抗体検査が行われましたが、それぞれの結果より、神戸では既に4万人以上、大阪では既に8万人以上が新型コロナウイルスに感染していることが推定されるという報告がなされました[注1]

つまりこの結果から考えられることは、実際にPCR検査を経て新型コロナ感染患者と認定された人よりも、はるかに多い人が「知らないうちに新型コロナウイルスに感染して、治癒している」という事実です。その一方で、感染しても無症状の人もいるため、感染拡大がなかなか止められないという面もありますが…。

5月4日には政府からは、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」が公表されました[注2]

かなり細かく生活内容を規定しており覚えるだけでも大変そうですが、これらの内容を基本として、経済を担う現役世代や日本の未来を担う若者・子供たちが、新型コロナウイルスとどう付き合いながら経済活動や社会活動を行っていくのか、そのコツを産業医学的な観点から考えてみたいと思います。

[注1]抗体保持率は大阪市立大学の調査では大阪市内で約1%、神戸市立医療センター中央市民病院・神戸大学などの調査では神戸市内で約3.3%(性別、年齢を調整すると2.7%)という結果。

[注2]厚生労働省「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』を公表しました」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

新型コロナうまく付き合うための3つの条件

まず新型コロナウイルスとうまく付き合うということは、シンプルに表現すると以下の3点に尽きると思います。

(1)新型コロナウイルスにできるだけ感染しない、感染させない
(2)もし感染しても重症化させない
(3)周囲の人を重症化・死亡させない

まず1点目、「コロナにできるだけ感染しない、させない」ためには? ですが、これは先ほどご紹介した「新しい生活様式」に細かく規定されていることを守れば守るほど感染は予防できると思います。

しかしインフルエンザ以上に感染力が強いとも言われるウイルスですし、感染しても無症状の人が一定数いるといわれていることから、社会生活をするうえで、絶対に感染しない方法をとるとすれば、外でも家でも宇宙服のような完璧な防護服を着て生活するしかありません。

指針で示された感染予防はできるだけ守って感染予防はするけれども、コロナウイルスに感染してしまう可能性があることに対しては覚悟が必要になってきます。

そこで2点目「もしコロナに感染しても、重症化させないこと」、そして3点目「周囲の人を重症化・死亡させないこと」が重要になってくるわけです。

そんなことができるのかと思われるかもしれませんが、リスクを低くすることは可能です。

先述したとおり、このウイルスは今のところエボラウイルスや鳥インフルエンザのように毒性が誰に対しても非常に高いウイルスでないことが判明しています。感染しても8割が無症状や軽症で治癒するという事実はもちろんのこと、このウイルスに非常に特徴的であるのは、重症化して死亡しやすいのは圧倒的に60歳以上の高齢者か基礎疾患やヘビースモーカー歴の長い中高年ということが、世界各国や日本の統計データを見ても明らかになっています。つまり基礎疾患を持たずヘビースモーカーでもない60歳未満の現役世代、青年、子供には圧倒的に重症者や死亡者が少ないのです。ちなみに日本では厚生労働省発表データによると20代未満の死亡率は0%、50歳未満だと0.1%程度と極小であり、50代でも0.6%。60代から死亡率は増えはじめ60代で2.5%、70代で6.8%、80歳以上では14.8%まで上昇します[注3]。これらの傾向は世界各国の統計データ上もほぼ類似しています。

そこで、経済や学校が再開するときには、まず基礎疾患がなく元気な60代未満の人から活動をはじめるべきとの意見が出てきました。

例えば、わが国では京都大学レジリエンス実践ユニット、世界では英国のエディンバラとロンドン大学の研究者グループやイスラエルのヘブライ大学のアムノン・シャシュア教授からすでに有用な提言が出されています。京都大学レジリエンス実践ユニットの解析によると、60代以上の死亡リスクは50歳未満に比べて16倍から約48倍になるとのことです。そこで京都大学レジリエンス実践ユニットからは、「60歳以上の高齢者、持病を持つ方などの、密集する集団への参加自粛が必要」であり、「その他の人は感染予防しながら経済・社会活動を行う」といった提案がなされています[注4]

エディンバラとロンドンの大学の研究者たちは新型コロナウィルスに対して重症化しやすい高齢者と基礎疾患者を完全に保護すれば規制を大幅に解除できるという論文を発表しました。[注5]

この研究を指揮したエディンバラ大学マーク・ウールハウス教授(感染症疫学)は、「新型コロナウィルスに弱い高齢者や基礎疾患者が自粛を継続しつつ、彼らをケアする人が定期的に検査を受けるなどして彼らを完全に保護できれば、その他の人たちは適切な感染予防をしながら仕事にも学校にも行ける。なぜならば、新型コロナに弱くない人達にとっては、新型コロナウィルスはインフルエンザ以上のリスクはないのだから」と語っています。(5月7日BBC記事「Coronavirus: Is it time to free the healthy from restrictions?」より)

イスラエルのシャシュア教授も高リスクグループである「67歳以上の高齢者や持病を持つ人たち」と「高齢者と別居が無理な人」を除いた低リスクのグループから普通の生活に戻していくことを提案しています。(5月1日朝日新聞DIGITAL記事「新型コロナ『経済封鎖せずに抑え込める』科学者が提唱」より)

[注3]厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(5月7日18時時点)」https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000628510.pdf

[注4]http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/documents/corona_riskmanagement.pdf

[注5]https://www.wiki.ed.ac.uk/display/Epigroup/COVID-19+project?preview=/442891806/447360858/van%20Bunnik%20et%20al.%20SS%20manuscript%20050520.pdf

リスクの高い人と低い人とを分けて徐々に緩和していく

5月14日には、政府が緊急事態宣言を39県で解除すると発表し、外出自粛を撤廃する動きが進んでいます。今後、この流れは首都圏、関西圏含む全国で進みます。ここで前述した知見を踏まえつつ考えられることは、リスクの高い人の外出はできるだけ控えてもらいつつ、従業員の年齢および健康診断結果や自己申告を元にリスクが低いと考えられる人から順に出社していくようにするというものです。

60歳以上の高齢者や基礎疾患のある人、長期にわたるヘビースモーカーの人には、ワクチンができるまでは、できるだけ外出を控えて人との接触機会を減らし、引き続きリモートワークを継続してもらう。リモートワークがどうしてもできない人には、ラッシュ時の出勤時間を避けたり3密環境を徹底的に避けた環境で仕事をしてもらうことで感染を予防する。病気の状態が悪い人は休職して社会的支援を利用してもらうことも検討するとよい思います。(併せて政府にも新型コロナ関連に関する傷病手当金の支給基準の緩和、期間延長などの柔軟な対応を検討してもらいたいと強く思います)。

学校においても同様に、基礎疾患を持つ子供や青年にはリモート授業の機会をもれなく提供し、かつ高リスクの高齢や病気を持つ教員はリモート授業専従にするといった手もあると思います。

先に自粛を緩めて経済活動や社会生活を始めた新型コロナウイルスに強い層の人たちは、とにかく睡眠(最低でも6時間以上)と栄養(タンパク質、野菜類、適度な炭水化物)をしっかりとって、心身ともに過労にならないように心がけることが大切です。残業は最小限にして、休息とリラクゼーションをしっかりとり、ストレスをためないように心がけることで免疫状態を良好に保つことが可能です。免疫力が良好である限り、新型コロナウイルスに強い世代は感染しにくいことはもちろんのこと、もし感染しても重症化するリスクは低く抑えられると考えられます。こちらについては前回の連載(「新型コロナ、ストレスの春の防衛策 睡眠は6時間以上」)で詳しく書いていますので、ぜひ参考になさってください。

それと同時に先に自粛を緩めた人たちは、(3)「周囲の人を感染させない、重症化させない」という配慮をするのは大前提です。例えば職場や街では常にマスクを着用し、老人と接する際には、必ず社会的距離(できるだけ2メートル、最低でも1メートル)をとるように心がける。基礎疾患者に関しては見かけでは判別できないため、マタニティーマークのような外から見てもわかるように何らかのバッジを身に付けていただくと距離をとることができるので国が配布してくれることを筆者は強く望んでいます。

また新型コロナウイルスに高リスクな人と同居している方でどうしても仕事や学校に行かざるを得ない場合は、居室を別にする。タオルや食器を共用しない。家庭内でもマスクをする。共用部分は定期的にアルコール消毒するといった対策をより厳重に実践してください。万が一体調不良が発生した場合は、政府から推奨されている「ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと ~8つのポイント~」の自宅隔離基準を参考にしてもらえば、家庭内感染をさらに強力に予防することができます[注6]

上記のような形で新型コロナウイルスに強い世代から経済活動を再開させつつ、コロナに感染しない工夫を行う。もし感染しても免疫状態を良好に保つことで重症化を防ぐ。そして新型コロナウイルスに弱い層である60代以上の老人と基礎疾患者に感染させないように守る対策を行えば、問題となっているICU崩壊も医療崩壊もかなり防ぐことができます。

ワクチンが完成するまでの期間を上記のような年代別リスクに応じて対策しながら自粛を緩和していけば、経済や教育、スポーツ、文化活動を壊滅的に衰退させることなくウイルスと共存していけるのではないかと産業医として考えるわけですが、いかがでしょうか?

[注6]https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf

奥田弘美
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内約20カ所の産業医として働く人を心と身体の両面からサポートしている。著書には『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想(めいそう)の普及も行っている。

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