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がんになった医師 手術して分かった臓器切除の影響

わたホームクリニック診療部長、わたクリニック船堀 院長 行田泰明さん

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NIKKEI STYLE

日経トレンディ

緩和ケア医として東京都葛飾区、江戸川区で訪問診療を行う行田泰明氏は食道がんを経験。発見・治療から5年の一区切りを迎え、これまでを振り返ってもらった。

──がんはどのように見つかり、その時どんな気持ちになりましたか。

30代から逆流性食道炎の胸焼けの症状があり、薬を飲んでいました。胸焼けがひどくなり、胸が引きつれている感じもあったので、以前の職場で、当時も週1回勤務していた病院で胃内視鏡検査を受けました。麻酔科医として手術で検査画像を見ていましたから、モニター画面で進行がんだと分かりました。検査してくれた先輩は何も言わず、私も聞きませんでした。

内視鏡検査の後、訪問診療をしながら、「働けなくなるのでは」「長男の大学受験はどうなる」「何年かは生活に困らないとしてもその後はどうする」などと次々に不安が生じました。訪問治療を終え、治療について先輩と話した後、涙がこぼれました。

食道がんは厳しいがんだと知っていたし、「死にたくない」という恐怖や「子育てがまだある」という気持ちで揺れ動きました。苦労して医学部に行かせてくれた両親や「先生の顔を見るとホッとする」と言ってくれる患者さんのためにも頑張ろうと自分を奮い立たせても、どーんと落ち込み、また浮上することの繰り返しでした。

──治療法はどのように決めたのですか。経過はどうだったのでしょう。

以前勤めていた、がん研有明病院を受診し、2日後に検査を受け、食道がんが確定しました。左の鎖骨の下のリンパ節に転移があり、ステージ3。外科医からは「5年生存率は40%くらい」と告げられました。

治療は標準治療に沿って、抗がん剤の後で手術と決めました。鏡視下手術を希望したのですが、鏡視下手術になるか開胸手術になるかは直前まで分からないというのが外科医の判断でした。

腫瘍内科医(がんの薬物療法の専門医)から、抗がん剤治療は全身に散らばっている見えないがん細胞をたたくのが目的で、食道のがんは手術で切除すると説明されていましたが、それでも抗がん剤でがんが小さくならなかったことにはがっくりしましたね。手術では、胸腔鏡で食道のがんを切除した後、腹腔鏡と小開腹手術で胃を管状にし、胸骨の裏側をはがして作った穴に通して、短くなった食道につなぎました。

──予想外だったことは何ですか。

知識として理解していることでも、実際に自分の身に降りかかると驚きました。まず、抗がん剤の副作用の口内炎で飲食物が飲み込めなくて参りました。最大の誤算は、3週間の入院予定が2カ月に延びたこと。食道と胃をつないだ所の一部がはがれて縫合不全を起こしたり、小腸液が逆流してきて誤嚥性肺炎になったりなど、想定外の曲折がありました。胃で食べ物の消化ができなくなり、ダンピング症候群で動悸、目まい、冷や汗、だるさなどが出ます。普段は8割方が下痢で、食べたものが15分くらいでそのまま出て来ることもあります。

運動量が落ち、食事が変わって、83kgあった体重が今は57kgです。筋肉が落ち、階段に足が引っ掛かって転ぶこともあり、もう元には戻せませんね。臓器の切除がこんなに健康の質に影響するとは想像していませんでした。

周りの「普段通り」が支えに

──何が支えになったのでしょう。

周りの人たちが病気を知っても普段通り接してくれたことですね。

それから、がんと分かったときから、時間があれば神社仏閣巡りを始めました。友人が、お子さんの高校・中学合格という御利益のあるお守りの写真を、「奇跡のお裾分け」とメールで送ってくれたのがきっかけです。

年に1回の海外旅行も楽しみ。ここ3年は長男と一緒に、米国・シカゴに大リーグの大谷翔平選手(エンゼルス)の試合を見にいっています。

──仕事の再開はどうしましたか?

がんが分かる前に次の職場が内定していましたが、がんが見つかって先方から断られ、無職になりました。傷病手当金や、若いときに先輩に勧められて入った休業補償の民間保険やがん保険があって、治療に専念できました。

手術後3カ月くらいから求職活動を始め、旧知のわたクリニックの理事長に声をかけていただきました。訪問診療、緩和ケアにはもともと興味がありましたし、関わってきたことでもあったので。最初の話し合いで理事長から週3日という打診があり、よいペースで仕事を再開できました。

──検診や人間ドックについてはどう考えていますか。

食道がんは初期は見つかりにくく、進行が速いがんではありますが、勤務先での健康診断で胃の内視鏡検査を受けていたら、もっと早く見つかったかもしれません。医者の不養生です。

有効性が認められている5大がんの検診は受けるべきです。胃はバリウム検査ではなくて、内視鏡検査を選ぶ。また、乳がんは自己検診も大切です。肺はX線検査だけでは心もとないので、人間ドックなどでヘリカルCT検査を受けておくと安心です。何か気になる症状があれば、検診や人間ドックを待つのではなくて受診してほしいです。

私自身は今は経過観察で肺と腹部は定期的に調べていますが、前立腺がんがそろそろ心配なので、血液検査を受けようと思っています。

──検診や人間ドックでがんが見つかった人が、治療を決めるときに気を付けることがあれば教えてください。

特に進行がんで手術をする場合には、そのがんの手術件数が多い病院で受けるべきです。診断を受けた病院がそうでなければ、紹介状を書いてほしいとお願いしていい。治療のベースは、各学会などで作成されているガイドラインに基づく標準治療です。先進医療や治験も選択肢になります。エビデンスが無い治療については、主治医とよく相談を。私自身はエビデンスが無い治療で、自費で高額であることを理解したうえで、主治医と話して、がんワクチンの治療を受けました。効果があったかどうかは分かりません。

自分の治療、自分の人生ですから、患者さんは自分の希望を言っていいんです。私は抗がん剤の治療中に、「末期になったときに望むことは何か」の(リビングウィル)を書いて、妻に渡しました。ホスピスに行く、医療用麻薬を含む解熱剤、鎮痛剤、向精神薬は使うが、酸素吸入は状況に応じて、経腸栄養、輸血などは不要、医療者には私の行きたい方向に寄り添ってほしい、葬式や戒名は不要といったことです。

(文 小島あゆみ、写真 洞澤佐智子)

[日経トレンディ2020年5月号記事を再構成]

行田泰明さん
わたホームクリニック診療部長、わたクリニック船堀院長。日本大学医学部卒業後、大学病院や東京都内の基幹病院を経て癌研究会附属病院(現・がん研究会有明病院)の麻酔科医としてがん患者の治療に当たる。要町病院、要町ホームケアクリニックなどで在宅医療に関わる。がん闘病後はわたホームクリニックの診療部長として復職。在宅での緩和ケアに取り組む。

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