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国内外に吟醸ブーム広めた立役者 山形・出羽桜酒造

世界で急増!日本酒LOVE(21)

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NIKKEI STYLE

「吟醸(ginjo)を世界の言葉に!」をテーマに、1997年から海外輸出をスタートさせたのが、創業1892年の出羽桜酒造(山形県天童市)だ。現在は米国・英国・香港・豪州など約30カ国・地域に日本酒を輸出している。当時国内では、同社が吟醸酒ブームのきっかけを作ったことで、空前の吟醸人気に沸いていた。だが海外では、熱燗(かん)で味わう大手の酒などが知られていただけで、輸出される地酒はごくわずかだった。

もともとドイツ・フランスなどヨーロッパ各地に出羽桜のファンがおり、まずは愛好者らへ個別に輸出することからスタートした。99年からは全米に進出し、海外展開に本腰を入れた。ハワイ在住のビジネス・パートナーがディストリビューター(酒を輸入し、現地の酒販店などに卸す仕事)としてハワイやサンフランシスコ、ニューヨークなど全米主要都市で酒の販売を始めた。現在はアジアや南米、中東にも輸出し、海外輸出は同社の売り上げの約10%を占める。

出羽桜はいま、世界でも認められ、2008年には世界最高峰の酒類品評会「IWC2008インターナショナル・ワイン・チャレンジ」で、「出羽桜 一路」(純米大吟醸)がSAKE部門の最高賞「チャンピオン・サケ」に輝く。さらに2016年には同品評会にて、「純米酒 出羽の里」が同じく「チャンピオン・サケ」を受賞。同じ蔵が世界一の称号を二度も受賞するという史上初の快挙を成し遂げ、国内でも全国新酒鑑評会で12年連続で金賞を受賞している。

出羽桜は吟醸酒を発売して、今年で40周年を迎える。生酒、スパークリングなど様々な日本酒を揃(そろ)えているが、出荷量全体の約7割を吟醸酒(精米歩合60%以下の大吟醸と吟醸)が占める。山形の厳しい冬の寒さが、低温長期発酵の"吟醸造り"に適していることもあるが、蔵元4代目の仲野益美社長は、「昔からの蔵の教えに、"オーナーも自ら製造に関われ"というのがあり、技術継承のため、高度な技術と強靭(きょうじん)な精神力を必要とする吟醸造りに長年励んでいるから」と説明する。

約40年前と言えば、主流は純米酒や淡麗辛口の酒。「吟醸酒は軽すぎる、キレイすぎる」といわれ、あまり売れない時代だった。「時間をかけて酒米をぜい沢に磨き、低温でじっくり醸す吟醸造りだから、蔵にはピンと緊張感が張りつめる。技術の伝承のみならず、緊張を蔵に保つ意味でも、蔵人たちにとって神秘的な吟醸造りはとても大事なこと」と仲野氏は指摘する。

同社は「吟醸酒こそ、日本酒復権の切り札」と信じ、日本酒低迷期にもこん身の吟醸酒を作り続けてきた。それまで吟醸酒は"品評会のために造られる高価で特殊な酒"だったが、一般の人々にも楽しんでもらいたいと、一級酒より安い「桜花吟醸酒」を発売。すると「フルーティーな香り、淡麗でふくよかな味わい」と高い評価を得て、瞬く間に地酒界に君臨した。吟醸ブームとともに出羽桜ブランドを全国に確立させ、結果として海外へも吟醸を浸透させるに至った。

海外進出について、仲野氏は「まずは東京、その後ニューヨーク、ロンドン、そして中華圏への入り口となる香港と、重要な4都市を早い段階から攻めたのが良かった」と振り返る。情報発信源となる世界の主要都市から、出羽桜の認知を地道に高めていった。

例えば米国・ラスベガスなどで、出羽桜を1本数百ドル(数万円)と派手に売り込み、現地で一時的に話題をさらうことも簡単だった。だが前述の米国のビジネスパートナーとは、「理解できる価格帯で販売し、飲食店はもちろん、酒販店や一般消費者にもブランドの魅力を地道に浸透させよう」(仲野氏)と話していた。

世界の酒ディストリビューターの中には「現地レストランに酒を卸せば十分」という考えの人も少なくない。だが仲野氏たちは、現地マーケットの裾野まで広く知れ渡ってこそ、出羽桜ブランドが現地に根付いたことになると考えた。「長いスパンで、継続的に現地で出羽桜が愛されるには、文化として根付くことが大事」と仲野氏は説く。

新型コロナウイルスの影響で、厳しい環境にさらされている飲食店も多いが、「我々が日ごろからゴールを飲食店にしているか、あるいは酒販店(さらにはその先の一般消費者)にしているかで、今回の落ち幅が全然違うのかもしれませんね」と彼は指摘する。ちなみに出羽桜では、山形名物「芋煮会」や新幹線の車中でも楽しんでもらえるよう、吟醸酒ながら缶入り180mlも販売している。

仲野氏は山形県酒造組合の会長や、日本酒酒造組合中央会の海外戦略委員長なども務める。日本酒業界全体のため、地元・山形のためにも奮闘中だ。「東北の蔵は高度な技術を有しており、酒質も高いので海外への輸出量も多い。中でも山形はチャレンジ精神が旺盛で、東北6県では海外輸出量ナンバーワン」と仲野氏は胸を張る。

東北エリアの総出荷量では、1位が秋田県、2位が福島県、3位が山形県の順だが、海外輸出量では山形が1位なのだそう。山形県酒造組合は「"やわらかくて透明感のある酒質"と称される山形酒を世界に」と奮闘し、その一環として県単位で地理的表示「GI山形」の指定も受けた。日本酒業界で県単位としては国内初となる。

「GI山形」とは2016年に山形県酒造組合が国税庁から受けた地理的表示のこと。例えばシャンパンは、フランス・シャンパーニュ地方で厳しい条件を満たして製造されたものしか名乗れないが、同様に産地の名称を知的財産として保護する制度だ。ボルドーワインやスコッチウイスキーなどもそういった例として有名だ。

雪国の山形には低温発酵に有利で雑菌の繁殖を抑える寒冷な気候や、雪解けによる各山系からの自然な仕込み水など、酒造りに大変恵まれた自然資源がある。

「GI山形により、精米歩合や酒米の種類だけでなく、山形という地域特性も語りながら味わってもらえるようになった。ワインのテロワール(地域特性)のように」と仲野氏。特にヨーロッパ各国や香港で酒を売り込む時に相手の反応が良くなったという。世界のワイン好きがボルドーを訪れるように、「日本酒好きなら日本へ、さらに山形へ行ってみなくては」と国内外からの山形訪問のきっかけになればと、山形県酒造組合は考えている。

山形は温泉王国でもあり、タケダワイナリーや米沢牛、世界的にも有名なものづくり企業・天童木工などもある。仲野氏は「"山形を日本酒の聖地に!"というのが我々のテーマ。日本酒に続き、ワインも県単位でGI山形を申請中で、他にもラ・フランス(洋梨)などが続く予定です。山形県産のものをまとめて海外に持っていけたらいい」と夢が膨らむ。

日本酒業界には「和醸良酒」という言葉がある。和は良酒を醸す、良酒は和を醸すという意味だが、出羽桜は「和醸良酒」を伝統として受け継ぐ蔵でもある。他の蔵からも後継者修業のための研修生を積極的に受け入れている珍しい蔵でもあり、すでに19人の研修生を輩出した。

「技術を盗まれないか?とよく周りに心配されますが、情報は発信したところに集まるもの。情報をオープンにすることで、自分たち自身が真剣に次を考えるようになる。後輩には負けられないから、現状維持では済まなくなる。切磋琢磨(せっさたくま)しあって、お互いに伸びればいい」と仲野氏。

「業界全体が伸びて、我が蔵も伸びる、というのが一番いい。1点だけに集約すると、やがては衰退する。集約は衰退。だからそれぞれの地域に、それぞれの価格クラスに、それぞれの規模に、それぞれの酒質に、様々な蔵の成功事例が散らばっているのが理想」と仲野氏は見ている。

同時に「外国人に日本酒を好きになってもらうには、楽しい飲み比べを体験してもらうこと」とポイントを話す。お酒同士の味の比較はもちろん、飲む温度の違いや酒器の違いによる比較、ペアリング料理による比較…と様々な飲み比べが楽しめるのも日本酒ならでは。「だが一番大事なのは、やはり誰と飲むかですかね」と最後に笑う。

日本酒は和食文化の代表格のひとつ。「和を醸す」という言葉を連想させる仲野氏の周囲への気配りややわらかい姿勢は、和の文化そのものなのかもしれない。今後も出羽桜は、海外へ"和"の文化を広げていくにちがいない。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)

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