品切れ・値上がり・転売 新型コロナで変わる食品価格
コロナウイルス感染拡大を防ぐための緊急事態宣言が出されて1カ月あまり。「巣ごもり」が続き、スーパーでも様々な商品が品切れになっていたり、値上がりしています。食品では野菜や肉、魚など幅広いものが値上がりしています。
転売も出た小麦粉
外出自粛による値上がりを象徴するもののひとつが小麦粉です。全国460店のデータを収集する日経POS(販売時点情報管理)で調べました。パン作りに使う強力粉と小麦粉にベーキングパウダーを混ぜたホットケーキミックスを見ていきましょう。それぞれ値段は1カ月間で20円、46円上がっています。家庭にいる時間が増えて自家製パンやホットケーキを焼くといった消費が増えているのが理由です。
ネットオークションのサイトで高値で転売されているケースも出ています。先日は菅官房長官が記者会見で発言する場面もあり「原料の小麦粉は備蓄もあり不足していない」と発言していました。自粛期間中は需要は変わらないと思いますが、供給が追い付いてくれば、値段は安定してくると思います。
もうひとつ上がっているのはカップラーメンやインスタントラーメンといった即席めんです。都内のスーパーではインスタントラーメンが棚から無くなっている店舗もありました。売れ筋商品の2つをみると、どちらも3月中旬から上昇し始めているのが分かります。
特売減少で平均価格上昇
巣ごもりに備えた買い込みで売れ行きが良くなって平均価格が上がっている。さらに特売が減っています。2つの商品の「特売個数比率」をみると、販売個数全体に占める特売の販売数の割合が3月中旬から低下しています。特売が少なくなって、平均価格が上がるという構図です。
巣ごもり消費でよく売れる商品を特売で安くして売る必要が無いということです。スーパーが「3密」を防ぐために特売を抑えているという面もあります。首都圏の3月の折り込みチラシ枚数は前年同月比3割減。4月はさらに落ち込みそうです。
エンゲル係数上昇へ
食材価格の値上がりによってエンゲル係数が注目されています。エンゲル係数は家計全体の支出に占める食費の割合を表す数値です。今年2月は26.6で34年ぶりの水準でした。新型コロナで数字が跳ね上がったわけではなく、流行以前から上昇傾向にありました。外食や中食、加工食品の購入頻度が高まっていました。コロナによる流通や外食産業の店舗閉鎖やイベント中止で収入が減っている世帯も多く、3月、4月はさらに上がってくるかもしれません。
新型コロナウイルスの感染防止のための前例のない長期間の自粛。様々なモノやサービスの価格を大きく変えるインパクトを持っています。その中で消費の傾向も変わり、コロナが終息しても食品への影響は大きそうです。家で料理する人が増えたり、オンライン飲み会が結構人気になったりしています。コロナが終息後は以前に比べ外食を控えたり、仕事後も飲みにいかずに帰宅するなど消費習慣が大きく変わるかもしれません。意外なモノの値段が大きく動くかもしれませんね。
(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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