拳闘→デザイン→世界放浪 たどり着いた次世代車いすWHILL 最高経営責任者(CEO) 杉江理氏(上)

認められなかった副業 世界放浪の旅へ

推薦で入学した立命館大学では体育会ボクシング部の副キャプテンを務め、ボクシングが生活の中心だった。将来について真剣に考え始めたのは4年生になってから。たまたま日産デザイナーの講演を聞き、興味を持った。新卒では採用されなかったが、あきらめきれずに専門学校でデザインの勉強をし、念願のデザイナーとして日産に就職した。

人気のミニバンのヘッドランプのデザインを担当するなど、仕事は楽しかったが、充実した会社員生活は突然、終止符を打つことになる。当時は禁止されていた副業が会社側に知られたためだ。ものづくりが好きで、開けやすいペットボトルのフタなどを考案して収入を得ていた。

「日産の社員が社外でこうした活動をすることはよいアピールになるはず」。説明資料をつくり、必死で会社を説得した。しかし、結果はむしろ警戒感を強めるだけだった。専門学校を経て再挑戦してまで入社した憧れの会社を、2年余りで離れた。

「日本はもういいかな」。特にやりたいこともなかった。それなら世界で最も多くの人が話す言語を勉強しようと、09年に中国・南京に渡る。生活のために日本語教師もしながら1年半ほど滞在して中国語を習得すると、ボリビア、パプアニューギニア、ウズベキスタンなど世界を放浪した。

その後、日本に戻って一緒にWHILLを作る仲間に出会ったのは、偶然だったかもしれない。それでも、その偶然を手放さなかったのは、幼少期からの「やりたいことに打ち込む」経験があったからだろう。

本気で熱中する「全力体質」は幼いころから変わらないという

「これだ」と思ったものに対しては、全力で取り組まないと気が済まない性格だった。大学ではボクシングだったが、小学校から高校まではバスケットボールに熱中した。「小さいころからずっと、みんななぜ本気でやらないんだと思っていた」という。

「本気でなければつまらない」。過去に直面した困難や苦労も終始、淡々とした語り口で話した杉江氏だが、この言葉には静かな力がこもっていた。すべてをかけて絶対に達成したいミッションは、本気で取り組むことを知る人だからこそ見つけられる。そう感じさせる一言だった。

「巨大な空港や慣れない場所を歩き回ることを考えると、海外旅行は難しい」。年齢を重ねて足腰が弱ってきた人が感じがちなためらいだが、自動運転車いすが 空港に普及すれば、そんな心配は減っていくかもしれない。

足元の課題にも対応している。新型コロナウイルスの影響でヘルパーが来られなくなるなどして、買い物や外出ができなくなった高齢者にModel Cを1カ月間無料で貸し出し、自分で出かけられるようにした。実用化が進むにつれ、WHILLで「移動の自由」を実感する人は少しずつ増えていきそうだ。

(ライター 高橋恵里)

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