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WHILLの杉江理CEOは自動運転機能付きの電動車いすの実用化実験に取り組んでいる

WHILLの杉江理CEOは自動運転機能付きの電動車いすの実用化実験に取り組んでいる

羽田空港やケネディ国際空港(米ニューヨーク)などで、自動運転機能を備えた電動車いすが乗客を搭乗口まで運ぶ実証実験が進んでいる。この電動車いすを開発したのは、横浜市のスタートアップ企業、WHILL(ウィル)。最高経営責任者(CEO)の杉江理(さとし)氏は入社3年足らずで日産自動車のデザイナー職を離れ、世界を放浪した経験を持つ異色のリーダーだ。

(下)「スマート車いす」世界へ 現地化テコに共感呼び込む >>

新発想の電動車いすの開発が始まったのは2010年。従来の「福祉用具」の枠を超えた乗り物が誕生するまでの過程は平たんではなかったが、道を切り開く原動力は「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というミッションだと、杉江氏は言い切る。

プロジェクトが立ち上がった当時、オリンパスで医療機器を研究していた福岡宗明氏(現WHILL最高技術責任者、CTO)の東京都町田市にあったアパートは「サニーサイドガレージ(SSG)」と名付けられた、ものづくりが好きな若者たちがつくったサークルの作業場になっていた。日産自動車のデザイナーを辞め、世界各地を放浪して戻ってきた杉江氏も友人に誘われて出入りし、「風を可視化する装置」などを作った。

研究テーマを探りに、あるリハビリ施設を訪れたときのことだ。明るく活動的な車いす利用者が「100メートル先のコンビニに行くのをあきらめる」と話した。段差などの物理的な障害に加え、「手助けが必要な人」と見られる心理的なハードルが外出をためらわせていた。デザインと技術の力で、誰もが気軽に乗って出かけたくなる電動車いすを作ろう――。杉江氏と福岡氏、SSGのもう1人の中心人物でソニーの車載カメラ開発部門に勤務していた内藤淳平氏(現最高開発責任者、CDO)の3人を軸にプロジェクトが始まった。

開発を始めて約1年後の11年、東京モーターショーでWHILLのプロトタイプを発表すると、予想を超える大きな反響があった。杉江氏は「賛否両論あった」という。「新たな乗り物を作ってくれた」という賛意と、「本当に実用化できるのか」といった懐疑的な声が入り交じった。反響を受け、さらに改善するための教えを請おうと、競技用車いすの世界的メーカー、オーエックスエンジニアリングを創業した故・石井重行氏を訪ねた。これが大きな転機につながる。

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