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富士と桜と「米のめし」 コロナ禍の日常生活で再確認

立川談笑

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NIKKEI STYLE

昨年末、我が家の昼飯どきに、ちょうどいい分量の冷や飯があったのでチャーハンを作りましたよ。よくある話ですわねえ。で、カミさんとふたりで食べ始めてすぐに、「……?」と顔を見合わせた。というのも、妙にうまいんです、これが。「なんかさ。きょうのチャーハン、やたらとおいしくない?」「確かに。ものすごくおいしい」

改めてひと口、またひと口と確かめるように味わってみると、間違いなくいつもより格段にうまい。口に含んでかみ締めるたびに、香りと味がふわりとしながら心に響くというか。わはは。大げさなようだけど本当に。いつもと何が違うんだろうと検証をした結果、普段との決定的な違いが分かりました。コメだ。コメが、違うんだ! というわけで今回はコメにまつわるお話を。

師匠・談志のこだわり

落語家なので色紙を書く機会があります。名前とともに「笑門来福」なーんて書き込んだりしますよ、いかにもそれっぽく。私の定番は「富士と桜と米のめし」。この3つは私自身が心の底から大好きなもので、これはたぶん日本人共通じゃないのかなあ。理屈ぬきで、何やら心に迫るものがありますよ。

この「富士と桜と米のめし」は、もともとは師匠・談志が色紙によく書いていたものです。一目見て激しいシンパシーを感じたのを覚えています。「やっぱり、分かってるなあ!」と。

談志はコメを大切にする人で……というかそもそも「食」全般をおろそかにしない人でした。コメに関してはとりわけ熱心。自宅にコメ専用の冷蔵庫があって、10キロ単位で保存してあるのは玄米です。家庭用の精米機もあって、食べる分だけその都度精米するという念の入れようです。コメは精米した直後から、いわば生鮮品扱いです。質がどんどん変わっていくから。

そのくらいですから談志はコメの炊き方も相当こだわってました。そういえば毎年田んぼでコメ作りをしてました。新潟市の岩室温泉で。とにかくコメに向き合う姿勢は徹底してましたね。

そして話は、冒頭の激うまチャーハンの「コメ」です。普段と違うのも当たり前。自分で近所のスーパーで買ったんじゃあない。頂き物でした。大腸の病気で入院した、その見舞いとして、送り主は誰あろう兄(あに)弟子の談春師匠。おお! さすが談志の薫陶を受け継いでます。ほれぼれしますねえ。あんまり事細かに明らかにするのは遠慮しますが、んもう! いいコメ! 今どきの、全国の生産者が競い合うコメづくり界でもきっと名うての品なのでしょう。なにしろ、手元に届いた前日が精米日なんですよ。きのうのきょうですよ。そんなコメ、見たことあります?

こりゃもう、せっかくの精米したてだから早く食べ切りたいし、とはいえ少人数の家族でちまちま消費してたら日数がたっちゃってもったいないし。悩みに悩んだすえ、弟子の中で唯一所帯持ちで自炊もする吉笑におすそ分けしました。ドーンと送ってやりましたとも。本当はあげたくなかったけど。

さて、年が明けて春になり新型コロナウイルスのせいで仕事もすっかりなくなって。あらためて私は自宅にこもってコメと向き合っておりますよ。とうとう先日は、玄米を買ってきちゃった。とはいえ我が家に精米機なんかありません。ではどうするか? 発芽させるのです。自家製発芽玄米。

500ミリリットルのペットボトルに玄米2合と水を入れて、放置します。日に数回水を替えますが苦ではありません。ずっと家におりますのでね。気温にもよりますが、3日もたてば玄米はふっくらと水をすって粒がひとまわり大きく、いくぶん白くなって胚芽の部分がポチッととがって見える。間違いなく発芽しています。ちょっとかわいくなって、玄米に情がわいてきます。なぁにやってんだか。

発芽のころ合いをみて普段より1割ほど多めの水で炊き上げると、おお! みごとな玄米ごはんのできあがりです。いかにも「玄米だぞ」「コメですぞ」と主張の強い香り。そしてプチプチとした食感としっかりとしたかみ応え。うん、いい。いいな、玄米。パパッと食べちゃうんじゃなく、正面から向き合って食べる感じ。精米よりも健康にいい気がして、自粛も悪くないなと思い始めたりして。

生まれて初めての精米

で、まあ。そんなこんなで3回くらい炊きましたかね。自家製発芽玄米を面白がって味わっていたんですが、やっぱり白米が恋しくなるんですな。銀シャリが。ピカピカと白く輝く、炊きたての白めしのあの香りが、ふと痛切にかぎたくなりました。それでも手元には玄米がまだ残っています。どうしよう? そこで思いつきました。「よし、精米しよう」

時間はたっぷりあるんです。手ごろな器を見つくろって、すりこぎを使って玄米をつく作業を始めました。ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ。生まれて初めての精米です。ウェブで調べたら「かなり長時間」とありました。ずいぶんざっくりだなあ。何かしらの合間に、あるいは作業をしながら米つきを2日にわたってやってみました。

その過程で、たまたま近所から自家栽培のグリーンピースのおすそ分けがあり、さらに横浜市在住の音響技師Kさんが裏山で採れたタケノコを持ってきてくれました。生活がどんどん昭和に戻っていく気がします。

そして得た結論。人力での精米は、やっぱり片手間じゃダメ。時間をかけたわりにはウェブ情報がいうほど「米ぬか」も出ないし、玄米の色も形状も変化があるようには見えませんでした。時間はあるけど、根気がないんだね。結局、せいぜい「1分づき」程度の玄米を、ままよとばかりに発芽もさせずにいきなり炊いてみることにしました。

炊飯器にセットして、スイッチを見たら液晶パネルに「玄米」の文字が。何年も使ってるけど、気づかなかったなあ。では「玄米」モードで、スイッチオン。……ふっくらと炊けた。IH圧力釜、おそれいりました。うん、やっぱりここは21世紀の世界だわ。

立川談笑
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
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