医学データの見方は要注意 うのみにせず冷静に分析を海堂尊の死ぬまで生きる(4)「喫煙と死亡統計」について

昨年暮れ、知人に珈琲(コーヒー)をもらいました。珈琲は身体によいという意見と、身体に悪いという意見があり、どちらが正しいのか、わかりません。こういうのは結果から逆算して言われやすい。膀胱癌(ぼうこうがん)になったら珈琲が飲み過ぎだからと言われがちです。でも大量に珈琲を飲んでも膀胱癌にならない人もいます。

癌は遺伝子の異常から発生することがはっきりしました。けれども癌になりやすい、なりにくいは、人によって違います。

年末、2年に及ぶ連載を終えたのはキューバ革命の英雄、フィデル・カストロの物語です。彼と盟友チェ・ゲバラは共に愛煙家で、フィデルは90歳まで生き、死因は公表されていませんが、大腸癌に罹患(りかん)したものの最後は老衰のようでした。ただ肺がんではないことは確かです。つまり葉巻や煙草(たばこ)を大量に摂取しても肺がんにならない人も大勢いるわけです。

がん死亡率は2017年では人口10万人あたり男性363人、女性239人と報告されています。男性では肺がんが断トツに多く、10万人あたり87人が肺がんでなくなっています。

すごく多いな、と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。10万人中80人ということは、0.08%です。これって多いですか?

しかもこれは喫煙者と非喫煙者が混じったデータです。ではこの中で喫煙者はどれくらいの比率なのでしょう。

ここで喫煙を目の敵にする厚生労働省や研究機関のデータは、いきなり10年追跡のコホート研究のデータに切り替わります。そうせずに死亡した人の喫煙量を調べ、肺がんになる可能性が非喫煙者の何倍になるか調べればいいだろう、と思う人は多いと思います。ところがそれはわからないのです。死亡統計は死亡診断書に記載された死因を元に作られますが、死亡診断書には喫煙者か非喫煙者かの記載欄はありません。つまり死亡統計から喫煙者の肺がん死亡者が多いとはわからないのです。そのためにコホート研究が行われるのですが、10年単位で多数の追跡する調査だし、いろいろな要素も加わるためデータに揺らぎが出ます。フィデル・カストロのように、煙草を大量に吸っても肺がんにならなかったという人の評価はしません。

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