ぎっくり腰で安静はNG 腰痛に「ハリ胸&プリけつ」腰痛・肩こり対策(下)

日経Gooday

腰痛は体を動かすほど良くなる

この記事や前回記事「あっ…『ぎっくり腰』 その直後、激痛でも動ける裏技」で何度か、「痛みを恐れたり、不安になったりすると痛みが増す」と言ってきたが、ここではそのメカニズムについて少し解説しよう。

ぎっくり腰は明確な原因となる病気がない腰痛だが、ぎっくり腰を繰り返す人や、腰の傷は治っているのに腰痛持ちになってしまう人が多いという。

「ぎっくり腰は、前かがみの姿勢に、荷物を持ち上げる、くしゃみをするなどの負荷が重なった結果起こりますが、この負荷の問題に加えて、さまざまな心理的な要因が脳機能に影響して腰痛の慢性化に関与することが明らかになってきました」(松平さん)

例えばぎっくり腰を経験した人は、「あの痛みは、もう経験したくない」と思うものだが、「その『ぎっくり腰トラウマ』は腰痛に対する不安や恐怖、悲観的な考えを生みます。すると、腰をかばわなければという過剰な警戒心から体を動かさなくなります。すると、うつ気味になってさらに体を動かさなくなり、筋力が衰え、脳が痛みに過敏になってしまいます。こうした悪循環を『恐怖回避思考』といいますが、これを断ち切らない限り腰痛からは解放されませんし、再発を繰り返すことになってしまいます」(松平さん)

つまり、「ぎっくり腰は痛い、怖い」と思わずに、「動かすほど腰痛は良くなる」と思うことがポイントだ。こういった正しい知識を得ただけで慢性腰痛が改善した人もいるという。「さらに、前かがみの姿勢の積み重ねでいわゆる『腰痛借金(負荷)』をためてしまわないよう、普段から『これだけ体操』(第1回記事「デスクワークでたまる『腰痛借金』 3秒体操で解消」を参照)を行う習慣をつけると効果的です。腰痛は体を動かして治しましょう」(松平さん)

腰痛を防ぐ「ハリ胸&プリけつ」

今述べた通り、腰痛持ちにならないためには、腰に腰痛借金(負荷)をためないことが肝心だ。

「そのために、洗顔や掃除機がけなど前かがみの姿勢をとるときに日ごろから意識したいのが、胸を張ると同時に、骨盤を前に傾けてお尻をプリッと出す『ハリ胸&プリけつ』です。高齢者を中心に、日常生活で骨盤が後傾した姿勢をとりがちな日本人は多く、特に洗顔をしたり重いものを持ち上げたりするとき無防備にそのまま前かがみになる人は結構います。そうした姿勢だと大きな負荷がウエストライン付近の椎間板に一気にかかり、ぎっくり腰という事故が起こります」(松平さん)

ただ、いきなり骨盤だけを前傾させる(プリけつ)のは難しいため、先に胸を張る(ハリ胸)と、しっかり「プリけつ」ができるそうだ。「普段から前かがみになるときは『ハリ胸&プリけつ』を心がけるといいでしょう」(松平さん)

「ハリ胸&プリけつ」

ぎっくり腰を防ぐ「くしゃみの仕方」

最後に、ぎっくり腰を防ぐくしゃみや咳(せき)の仕方をお教えしよう。意外に思うかもしれないが、くしゃみや咳はぎっくり腰と関係が深い。

「無防備にくしゃみや咳をすると、瞬間的に前かがみになるため、腰に大きな負担がかかり、ぎっくり腰が発生しやすくなります。机や壁に手をついてするだけで、腰にかかる瞬間的な負担をかなり減らすことができます」(松平さん)

手をつく所がないときは、自分の太ももに手をつけばいいそうだ。座っているときだけでなく、立っているときもハリ胸で膝を少し曲げた姿勢で太ももに手をつくとよい。なお、咳やくしゃみをする際は、咳エチケットも忘れないように気を付けよう。

(文 村山真由美、イラスト 平井さくら)

[日経Gooday2020年4月28日付記事を再構成]

松平浩さん
東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授。1992年順天堂大学医学部卒業、1998年東京大学医学部附属病院整形外科。同大学にて博士号取得。英国サウサンプトン大学疫学リサーチセンター、関東労災病院勤労者筋・骨格系疾患研究センター長等を経て2016年より、現職。2019年Bipoji Lab開設。2015年NHKスペシャル「腰痛・治療革命」出演、監修。『3秒から始める 腰痛体操&肩こり体操』(NHK出版)など著書多数。現在、体操動画をTwitter、YouTube(https://youtu.be/KJvmhyZtPAE)、インスタグラムで配信中。

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