2020/5/12

皆が自然体で能力発揮 山口明夫社長に聞く

日本IBMの山口明夫社長

――昨年から順位を2つ上げ1位となりました。

昔のIBMにはパワフル型の、象徴的な女性のリーダーがいたが、ここ3~4年でステージが変わってきた。男女関係なく、さらには新卒も中途も外国籍の社員もそれぞれの個性を生かし、自然体で能力を発揮していこうという雰囲気が強まってきた。そのなかで「女性が活躍できる企業」という評価をもらえたことはうれしい。女性管理職比率は2025年までに25%以上にすることが当面の目標だ。

――ダイバーシティー推進にあたり企業トップとして心がけていることは?

女性に活躍できる場を与えよう、女性を受け入れる――有識者会議などに出ると、そういう発言をする人たちがまだ多い。男性リーダーが「主」で、女性や外国籍などの「他」を受け入れる、という意識があるからだろう。社内ではそのような見方を絶対にしないようにと気を付けている。

――多様性を尊重することは、個人のためだけでなく、企業が成長する上でも必要なことでしょうか。

ビジネス戦略そのものだと思っている。誰もが前向きに仕事をできる環境になるのが一番。働く上での「壁」はどんな人にもある。女性だけでなく男性も介護や子育てなどで大変な人はいる。それぞれの立ち位置をお互いに考えること、価値を認め合うこと。それが企業としての成長につながる。

「20年までに30%」目標 「達成」わずか6%の33社

20年までに女性管理職を30%に増やそうという政府目標が掲げられて17年。だが、今回、「女性が活躍する会社ベスト100」にまとめた「企業の女性活躍度調査」へ回答した542社のうち、30%を超えたのはわずか6%、33社にとどまった。

女性管理職比率が最も高かったのは化粧品のシーボン(85.6%)で、40%を超えた企業は14社あった。だが全体を見ると5%未満が38.6%にのぼり、10%未満が6割以上を占めている。日本IBMはもちろん、2位だったアクセンチュアも3位の花王グループも3割には届かず、ベスト100の上位10社で達成したのはJTBと高島屋、資生堂の3社にとどまった。

政府は5年前、さらに上場企業に対し女性の役員比率を10%に引き上げるよう求めた。今回の調査は非上場の有力企業も含むが、女性役員相当職(執行役員を含み、監査役や社外取締役は除く)の比率が10%を超えた企業は日本IBMやアクセンチュア、ファイザー、アフラック生命保険など92社。全体の17%だ。2つの目標を達成しているのは高島屋と資生堂、パソナグループなどわずか24社だった。

17年前に入社した社員はすでに40歳前後。時間は十分にあったはずだがその成果は不十分で、世界的に見ても日本の取り組みの遅さが際立つ。男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数の順位は下落傾向を続けており、19年末の発表では153カ国中121位と、過去最低を更新している。

(女性面編集長 中村奈都子、砂山絵理子)