日本経済新聞社と日経BPの女性誌「日経ウーマン」による2020年「女性が活躍する会社ベスト100」は、日本IBMが1位になった。19年から女性管理職育成のための年間プログラムを実施し、参加者54人のうち3割が管理職に昇進。女性管理職比率(19年末時点)は17%に伸びるなど、活動が実を結んだ。
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「何か策を考えないと、次の一段を上れないという危機感があった」。日本IBM・ダイバーシティー推進担当の伊奈恵美子さんは育成プログラム「W50」について説明する。同プログラムを始める前の約5年間、女性管理職比率は13~14%ほどで推移し「踊り場状態だった」(伊奈さん)。そこで女性管理職候補を徹底的に洗い出し、W50のメンバーを選抜。1年間、管理職になるためのスキルや心構えなどを、講義やディスカッション、eラーニングなどを通じ学べる機会を用意した。
当初は「なんで私が候補に?」と自信を持てない女性社員もいたが、育成プログラムの期間中にも管理職に昇進する人が現れ、それが他のメンバーへの刺激になったという。「『あなたが管理職にならなければ隣の男性がやることになるし、後輩にチャンスが先に回るかもしれない。それなら自分がやってみたら』という、自信が持ちにくい女性に対してならではの背中の押し方もある」と伊奈さん。「管理職になりたくない」と答える割合は、W50開始前の4割から、1年で1割に減った。
ただ、女性側の意識を変えるだけでは不十分。誰かが引き上げなければ女性管理職は増えない。そこでW50のメンバーそれぞれに役員などが「スポンサー」として付き、管理職になるまで面倒を見る仕組みも設けた。スポンサーは女性より2~3階級ほど上の、人事に影響を及ぼせる人。キャリアに対して単に「メンター」としてアドバイスをするだけでなく、管理職に指名したり、社内各所に働きかけたりするのが肝だ。
もう一つ、IBMが力を入れているのが、女性活躍推進や両立支援分野への男性社員の参画だ。
女性社員の活躍推進を目的として1998年に設立した社長直轄の諮問委員会「ジャパン・ウィメンズ・カウンシル(JWC)」に2019年、初めて男性社員が参加した。「仕事で性別は意識していないと思っていたが、自分以外は全員女性という環境では議論や合意形成の流れについていけず、発言を遠慮してしまった」(男性初のメンバーである吉崎貴哉シニア・コンサルタント)。男性にもマイノリティーの立場を経験してもらうことで、多様性を尊重する風土を強固にする。