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35歳で親と同居 シンガポールのカワウソの生存戦略

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ナショナルジオグラフィック日本版

東南アジアにある人口570万人の都市国家シンガポールでは、カワウソが家族で街の通りを駆けてゆく様子を普通に見られるという。50年前、シンガポールの河川は深刻な汚染問題を抱えていた。腐乱した動物の死骸やごみ、下水が流れ込んで息が詰まりそうな川からは、在来種のビロードカワウソが姿を消し、局所絶滅の危機にさらされていた。そこで政府は1977年、河川のクリーン・キャンペーンに乗り出した。おかげで、1998年にはカワウソたちが故郷の川へ戻りはじめた。

現在シンガポールには、10のカワウソ家族が元気に繁殖しており、それぞれに名前が付けられている。個体数は、少なくとも90匹。池のコイなどエサが豊富なことと、天敵が少ないことから、その数は増え続けている。体重9キロほどのビロードカワウソは、都市空間にも適応し、コンクリート製の橋をねぐらにしたり、歩道で日向ぼっこをしたりする姿がよく見られる。

しかし、街にすむカワウソの数が増えれば、人間との衝突は当然起こる。セントサ島のゲート付きコミュニティー(ゲートを設けて住民以外の出入りを制限しているコミュニティー)では、2015年に池のコイすべてがカワウソに食べられるという被害に遭った。

地元紙によると、同じ地域にあるホテルでは、8カ月で8万5000シンガポールドル(現在のレートで640万円)相当の観賞魚がカワウソによって失われたという。2017年には、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ自然公園で5歳の女の子がカワウソに噛まれたと報道された。

そんなことがあっても、シンガポール人の多くはカワウソに好意的だ。2016年のシンガポール建国記念日のマスコットを決める投票では、カワウソが圧倒的勝利を収めた。今ではフェイスブックにファンページがいくつもできている。

「オッターシティ」(オッターは、英語でカワウソという意味)も、そんなファンページの1つだ。このページを立ち上げた写真家のジェフリー・テオ氏は「5年前には、カワウソのことをよく知っているシンガポール人はほとんどいませんでした。でも、今は、どのカワウソがどの家族に属しているのか、その家族に子どもが何人いるかということまで答えられる人がほとんどです」と話す。

市民だけではなく生物学者も、都市にすむカワウソがいかにしてシンガポールの雑踏に適応したかに興味を抱き、研究を始めている。

シンガポールにあるエールNUS大学の生物学者で、都市のカワウソを研究するチームの一員であるフィリップ・ジョーンズ氏は、住民が街で見かけたカワウソを報告できる「オッタースポット」というアプリケーションを作成した。「個体群はとても健全です。ひとつだけ問題があるとすれば、そのうち縄張りが足りなくなってしまうということでしょうか」

このような研究は、カワウソが新しい環境にどう適応できるかについて貴重な情報を与えてくれる。ビロードカワウソは、インドからミャンマー、マレーシアまで、アジアの広い範囲に分布しているが、川の汚染や生息地の消失、その他の要因で数が減り、国際自然保護連合(IUCN)によって危急種(vulnerable)に指定されている。

狩りの成功率が下がり、子離れが遅れる

シンガポールのカワウソは、1990年代にマレーシアからジョホール海峡を渡って戻ってきたと考えられている。それが今では、シンガポール全域に生息している。

「ズーク・ファミリー」として知られるカワウソの家族を観察しているうちに、都市にすむカワウソの生態について新たなこともわかってきた。たとえば、カワウソは本来狩りが得意な動物だが、ズーク・ファミリーのおとなたちは、子どもがいると狩りの成功率が劇的に下がるのだという。子どもに狩りのやり方を教えるのに、時間を取られてしまうためだ。

「子どもの成功率は50%前後、成体の成功率は100%近いです。ところが、子どもがいると行動を変えなければならないので、成功率が落ちるのです。とても面白いことだと思いました」と、ジョーンズ氏は言う。

このほかにも研究チームは、土地が狭いこともカワウソの行動を変化させていることに気付いた。子離れの時期が遅れるというのもそのひとつだ。

野生のカワウソは2歳になると親を離れて自立するが、シンガポールのカワウソは3歳か4歳になるまで親と一緒に生活する。縄張りが空くのを待っているのだ。「人間で言うなら、35歳の大人がまだ親の家に住んでいるようなものです」

1匹のカワウソが必要とする縄張りの広さは、エサがどれだけ手に入るかにもよるが、中には広い縄張りを持ち、1日に15キロ近く移動する個体もいる。ビロードカワウソは一夫一婦制で、家族は両親、成長した子ども、4~6匹の子どもで構成されている。

すっかり都市の生活に慣れたかのように見えるカワウソにも、脅威はある。カワウソとともに川の食物連鎖の頂点に立つミズオオトカゲは、カワウソの子どもを捕食する。

でもさらに大きな脅威がある。実は、シンガポールのカワウソの主な死因は自動車事故だ。カワウソ保護団体のオッター・ワーキング・グループのバーナード・シアー氏によると、年間5~6匹が、自動車にはねられて死んでいるという。

チャリティー活動家、政府関係者、研究者で構成される同団体は、カワウソを監視し、道路標識やカワウソに関する豆知識が書かれた情報板を、カワウソがよく出没する場所に設置するなどの啓発活動を行っている。2016年には、シンガポールマラソンのコースにカワウソの家族が突然進入してきたため、団体のボランティアが慌てて走って行ってランナーに警告し、衝突事故が起こらないようコース沿いに立って目を光らせていた。

様々な市民の協力によってカワウソを保護するというこの団体のやり方は、台湾の金門島やマレーシアの首都クアラルンプールなど、他にも都市カワウソが増えている地域で採用されている。

正体不明の動物に集まった関心

シンガポール国立大学の生物学者シヴァソティ・エヌ氏にとって、シンガポールにカワウソが戻ってきたこと、住民たちの人気を集めていることはうれしい展開だった。

シンガポールの川にカワウソが戻ってきたばかりの頃、カワウソを見たことのない人々はビーバーかアシカだと思ったという。シヴァソティ氏は、人々にカワウソのことを知ってもらうために「オッターウォッチ」というウェブサイトを立ち上げた。

1990年の初め頃は、カワウソを研究するにはマレーシアのペナン州まで出かけなければならなかった。1匹でも見つからないかと期待して、マングローブの森を何時間も歩いたものだと、シヴァソティ氏は言う。それが今では、家からちょっと外に出れば、遊んでいる姿が目に留まるようになったのだ。

次ページでも、都市の自然の中でしたたかに生き抜くカワウソ一家の様子を写真でご紹介しよう。

(文 CLAIR TURRELL、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年4月26日付の記事を再構成]

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