Men's Fashion

コロナ禍で覚醒 高級ブランド、社会貢献で消費者と絆

トピック

コロナと闘う(下)

2020.5.8

中国や韓国では小売店の営業が再開され、欧州でもフランスなど一部の国で経済が動き出した。新型コロナウイルスの感染状況が地域ごとに濃淡を見せ始めたなかで、ブランド各社は様々な支援策を打ち出す一方、「コロナ後」のビジネスをいち早く平常化するための準備にも考えを巡らせている。焦点は従業員らの雇用を可能な限り守ること、そして、消費者との接点を絶やさず情報発信を続けることだ。コロナ禍を境に消費者の価値観が激変することも予想され、各社は有事のさなかでの振る舞いに神経をつかっている。(前回の記事は「コロナ対策に高級ブランドの技 医療用に続々『参入』」




コロナ後の「新しい価値観」を見すえて

2月に開かれたミラノコレクション。ジョルジオ・アルマーニ氏はスタッフを最小限にした無観客ショーの開催を決め、ショーの後半では中国に着想したかつてのルックを登場させて、当時コロナ危機のただなかにあった中国に激励のメッセージを送った。3月にはイタリア内で被害が急拡大。グループ全体で寄付や医療用作業着の製造に取り組みながら、アルマーニ氏はイタリア版「Vanity Fair」誌にミラノへの思いを語った。

マスクを着けるジョルジオ・アルマーニ氏(2月23日、イタリア・ミラノ)=ロイター

「この街の使命は新たなソリューションを生み出していくこと。この精神で歴史上の悲劇も乗り越えてきた。今回の災禍においても、この街は時代の兆候を読み解きながら、それをミラノ流に解決していくに違いない」。モードの帝王、アルマーニ氏の言葉は大きな反響を呼び、ファッション界を勇気づけた。

コロナ後、消費者の価値観が変わり、ファッションビジネスは大きな転換点を迎えるとみる人は多い。スイスの時計ブライトリングの最高経営責任者(CEO)、ジョージ・カーン氏は「リバウンドは必ずあり、客は戻ってくる。ただし、コロナをへて消費者の価値観は確実に変わる」と予測する。高級の定義が変わり、環境配慮や健康というキーワードがこれまで以上に消費活動の中で重みを増すとみる。すでにブティックが再開した中国では客が戻り、2020年第一四半期の中国市場の売り上げは前年の同時期より大幅増になりそうだ。とはいえ「コラテラル(不運な巡り合わせ)のダメージは予測もつかない」。日本などの一部店舗再開の見通しは不透明とあって、今は「オンライン ブティック」の強化を進めている。

「コロナ後の消費者の価値観は確実に変化する」と話すブライトリングのジョージ・カーンCEO