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エビ天に合うきめ細やかな泡 広島・福山のワイナリー

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NIKKEI STYLE

広島県福山市に2016年、珍しいワイナリーが開業した。福山わいん工房――スパークリングワインを中心としたワイナリーだ。

オーナーの古川和秋さんは、フランスのミシュラン星付き店で修業した経験を持つ料理人出身。スパークリングワインは主に、シャンパンで用いられる手のこんだ「瓶内2次発酵」という方式で造る。ガスを充てんするのではなく、瓶詰めの際に酵母と糖を加えて炭酸ガスを発生させ、きめ細やかな泡をワインに溶け込ませるのだ。国際品種である白ブドウ、ソーヴィニヨン・ブランと日本で開発された黒ブドウ、マスカット・ベーリーAを使った初リリースのワインは、アジア最大規模のワイン審査会「ジャパン・ワイン・チャレンジ2018」で、それぞれ銀賞と銅賞に輝いた。

古川さんがワインに興味を持ち始めたのは、今から約20年前の中高生のとき。未成年のためまだ味わうことのできない酒という「大人の世界」に心引かれたのだ。ソムリエが主人公のドラマ「ソムリエ」を見て、原作マンガを手に取った。ワインの豊かな香りや味わいが描かれる中、「どんな飲み物なんだろう」と想像を膨らませ、興味が広がった。

まずは、ワインの世界に近いフランス料理を学ぼうと大阪の辻調理師専門学校の門をたたいた。最高峰のスパークリングワインの産地であるシャンパーニュとのかかわりは、辻調グループのフランス校で学んでいたときに生まれた。半年間の現地レストラン研修先としてワインの産地の店を希望したところ、シャンパーニュ地方の店で働くことになったのだ。

店のソムリエと仲良くなると、毎週末さまざまなメゾン(シャンパーニュでは生産者をこう呼ぶ)に連れて行ってくれた。帰国し日本の店で修業を積んだ後、再び渡仏しシャンパーニュのミシュラン星付き店(現在は三つ星)「ラシェット・シャンプノワーズ」で働くことに。シェフは、シャンパーニュの帝王と呼ばれる大手メゾン、クリュッグの当主オリヴィエ・クリュッグ氏と懇意で、よく彼が店を訪れた。古川さんのシャンパンへの思いは、さらに深く心に刻まれていった。

実は、古川さんはすぐにワイナリーの設立を目指したわけではない。再び帰国したとき、地元である福山に開いたのは、フランス料理と串揚げの店だった。しかし、カウンターだけの店で客にワイナリーを開きたいという自分の夢を繰り返し語るうちに、主に店の客が株主となりワイナリーを立ち上げることになった。「夢は語るものですね」と彼は感慨深げに言う。

福山わいん工房のワインで使用するブドウは、6、7割が福山で古くから生産しているマスカット・ベーリーAだ。同ブドウは、昭和2年(1927年)に新潟の岩の原葡萄園の創設者・川上善兵衛が赤ワイン用の品種として開発したもの。

「福山は生食のブドウの産地として知られていますが、実はほとんどがマスカット・ベーリーA。ワイン用に開発された品種ですが、生食でもおいしいのではと、早くからこれを栽培していたんです。だから樹齢80年ぐらいのブドウがあるんですよ」(古川さん)。福山は寒暖差が少ない土地。生食の人気品種ピオーネなどは寒暖差がないと色づきが悪いが、マスカット・ベーリーAはそのような気候でもよく色づき栽培しやすかったのだ。

しかし、近年は急速な温暖化でこのブドウも色づきが悪くなってきた。そのため、栽培品種も黒ブドウのような色づきの善し悪しがない、黄緑色のシャインマスカットなどに代わりつつあるという。

「古木は房が大きくならず、粒の数が少なく味わいが凝縮します。せっかく80年もの樹齢のブドウがあるのに切ってしまうのはもったいないですよね。うちのワイナリーは、赤ワインではなくスパークリング中心なので、酸や糖が希望の分析値であればブドウの色のりは関係ない。種なしにする処理もいりませんし見栄えも関係ないので、生食より栽培に手がかからないんです。農家の方々はワイン用ブドウの栽培にはなじみがなく最初は乗り気ではなかったのですが、事情が分かるにつれ協力していただけるようになりました」(古川さん)。

同ワイナリーのマスカット・ベーリーAのワインは、ユニークな方式で熟成させる。「ソレラシステム」というシェリーで使われる手法だ。新酒と古酒を調合しながら熟成させる方法で、過去の年のワインがたるから減ると新しい年のワインをそこに継ぎ足す。「継ぎ足しながら使うウナギのたれと同じです」と古川さん。シャンパーニュにおける小規模生産者のカリスマと呼ばれるメゾン、ジャック・セロスがソレラ方式を採用しており、その考え方に影響を受けたという。

そもそも、シャンパンは品質を一定に保つため、ブドウが特にいい年以外は複数年の「リザーブワイン」(過去に造られたワイン)をブレンドする。しかし、「ジャック・セロスを訪れた際、当主のアンセルム・セロスが『ブレンドで決めていると、(小規模生産者の場合)当主が変わったときに味ががらっと変わってしまう』と言っていて。それでもいいのかもしれないけれど、味が変わればそれまでのメゾンのファンが離れてしまう。経営を考えると難しい、だからソレラという方式を取り入れたのだと話してくれたんです」(古川さん)。

ソレラシステムならば、新しいビンテージのワインが全体に占める割合は少ないので、代替わりしてもワインの味わいががらりと変わることがない。現在、シャンパーニュでもこの方式でワインを造るメゾンが増えているという。

「福山の人々が飲みに来るのに便利なように」と、福山わいん工房は、ワイナリーとしては珍しく商店街にある。水曜から土曜日の夜は、施設内に設けられたワインバーでワイナリーの酒と共に料理を楽しめる。(新型コロナウイルスの影響から当面は休業)

当初は週末限定で古川さんがキッチンに立ったが、現在は漁業協同組合にも所属する福山のシェフが腕を振るい、瀬戸内海の鮮魚を使った料理が評判だ。「福山はノリの養殖も盛んなのですが、生ノリなどもうちのワインにすごく合うんです」と古川さん。ちなみに、マスカット・ベーリーAのスパークリングに合わせるお薦め料理は、エビの天ぷらだそうだ。

昨年は、耕作放棄地を借り受けた畑に新しくブドウの木を植えた。シャンパンに使われる品種であるシャルドネとピノノワールに加え、ソーヴィニヨン・ブランを自ら栽培している。「ソーヴィニヨン・ブランを使ってスパークリングワインを造っている生産者は世界的にも珍しい。香り高い品種で、どの土地でもある一定の味わいとなるシャルドネなどと異なり幅広い表情があるのが面白い」(古川さん)。

例えば、フランスであればグレープフルーツのようなキリっとした香りが特徴となるが、南半球で育ったものはトロピカルなイメージを持つ。「自社畑のブドウからどういう特徴がでてくるのか。これからが楽しみ」。古川さんは、これからもいくつもの夢を語り続け、実現させていくのだろう。

(フリーライター メレンダ千春)

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