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人と人とをつなぐことで
美術品の確かな価値を
時代を超えて引き継いでいく

――世界で最も長い歴史を持つ英国の美術品オークションハウス、クリスティーズの日本法人社長を務める山口桂さん。20年以上にわたり、日本美術の「スペシャリスト」として世界を舞台に活躍してきました。そもそも、オークションハウスのスペシャリストとはどんな仕事なのでしょう?

一言でいえば、特定分野の美術品に関する深い専門知識を持ち、作品の価値を見定め、鑑定と査定をする者のことです。僕は日本美術と東洋美術のスペシャリストとして、米ニューヨーク(NY)など海外を中心に活動してきました。

――昨年は江戸時代の絵師、伊藤若冲を見いだしたことで知られる米国のコレクター、ジョー・プライス氏のコレクションの一部(約190点)の出光美術館へのプライベートセールで注目を集めました。日本の美術ファンを大いに沸かせた大仕事を手掛けた経緯は。

プライス夫妻とは、あるセールの下見会場で出会ってから20年来の付き合いで、何度か自宅に招かれたこともありました。僕がまだNYで仕事をしていた4年ほど前、「遊びに来ないか」とプライス氏から電話があり、自宅を訪れた際に「コレクションの一部を日本に売りたい」と相談を受けました。

――プライス夫妻はなぜコレクションを手放そうとしたのですか?

ジョーさんが90歳を迎えるなど夫婦とも高齢になる中、貴重なコレクションをどう次世代につなぐべきかを考えられてのことです。折しも自宅のあるカリフォルニアで山火事が相次ぎ、火災や盗難のリスクも気になっていたようです。

コレクションの半分はロサンゼルスの美術館に寄贈することを決め、「残りは何としても日本へ」という強い意向をお持ちでした。

ジョーさんは日本人である妻の悦子さんと共に若冲をはじめとした日本のアーティストの作品を見いだし、収集してきました。コレクションを日米に残すことで両国の研究者が行き来したり、作品の貸し借りをしたり、交流を続けてほしいとの思いがあったようです。

――プライベートセールでは、オークションで買い手を募ることはできません。どのように買い手を探すのでしょうか。

売却に当たり、プライス夫妻から2つの条件を提示されました。一つは、コレクションを散逸させたくない、プライス・コレクションとして一括で売りたいというもの。もう一つは、個人ではなく美術館など公的な施設への売却です。一般の人にも作品を公開して楽しんでもらえることや、作品の管理や研究の体制が整っている施設への売却を希望されていました。

通常は売り主と買い主は公にしないのですが、今回はプライス・コレクションとして買い手を探したので、公平性の観点から、買い手候補についてもプライス夫妻に具体名を挙げながら相談しました。

結果、色々な縁で出光美術館に決まりました。現館長の出光佐千子さん自身が近世の日本美術の専門家であり、学生時代にプライス家にコレクションを見に行ったこともある。金額は明らかにできませんが、お金のことも無事クリアできました。作品は20年秋から順次公開される予定です。

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