近年の人事制度は会社と従業員双方のために導入されてきた

上司と部下との信頼関係が棄損することで、上司側は仕事の進め方に不満を持ちます。特に評価権限を与えられている管理職にとってみれば、業績を達成する責任を負わされているのに、部下がその達成のためにしっかり働いてくれているかわからない、ということになってしまうのです。

空気感を共有できないリモートの環境の中、慣れないWEB会議の連続と電話対応などにより、不信感はさらにたかまってゆきます。そうした状況を乗り越え、半期あるいは年度末になってなんとか期初の目標を達成したとしましょう。

さて、この時、上司は部下に対してどんな評価をつけるでしょう。

成果を出したから高い評価?

いえ、決してそんなことはありません。

なぜなら、近年の多くの会社の人事制度は、成果だけを評価するようには設計されていないからです。

そもそも1990年代から2000年代初頭にかけて広がった、成果だけを評価しようとする人事制度は、多くの会社で否定されました。そのため、近年の人事制度改定では、普段の仕事の中で求められる行動をコンピテンシーとして定義し、その発揮状況を確認する仕組みが広がっています。

また成果が達成されなくても、そのためのプロセスをしっかり進めていれば評価する基準も広まりました。多くの企業で用いられる目標管理制度では、成果目標に加え、プロセス計画も記すことが義務付けられています。その評価ウェイトはたいてい半々くらいで、成果とプロセス両方がしっかり達成されていてはじめて高い評価を得られるようになります。

これらはすべて、従業員の活躍による会社の成長を期待して導入されてきた仕組みでした。会社にとってハッピーなことが、従業員にとってもハッピーになるように設計されてきたいのです。

その仕組みが、逆風になる可能性があります。

成果はたしかに達成した。けれどもプロセスが見えないから、高く評価するわけにはいかない、というものです。そんな状況でもし、成果すら達成されないとすれば、人事評価結果は惨憺たるものになるでしょう。

信頼感はまず会社と上司側が確保するために努力すべき

上司と部下とが不信感にさいなまされた状況に陥ってしまった会社は、長く続けることが難しくなるかもしれません。だからまず、会社側が様々な仕組みで組織としての信頼感情勢を進めなければいけません。

間違っても、いきすぎたプレゼンス管理ツールの導入などはあってはならないでしょう。リモートワークに対して監視に近い状況をつくろうとする人たちもいますが、それは信頼感の観点では逆効果です。

会社側が今進めるべきは、信頼を前提とした、期待する成果の明確化です。そしてそのために必要な役割をはっきりさせ、従業員に浸透させることです。

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