新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるい、ファッション業界はショーやイベントの自粛、店舗閉鎖など大きな打撃を受けている。欧米では高級品需要の低迷が当面続きそうだ。ただ、平素から文化の担い手と自負するブランド各社は、文明社会の危機に直面し身を縮めてばかりはいられない。フランスのビッグメゾンはアトリエの職人を動員して医療用のマスクやガウンの生産に着手。まずは「できることをやる」動きが広がるなかで、高い縫製技術など、コロナ禍克服に貢献できる資産の再発見が相次いでいる。(次回の記事は「コロナ禍で覚醒 高級ブランド、社会貢献で消費者と絆」)
医療用マスクやガウン、職人技生かす
世界の耳目を集めたのは、ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメスなど仏高級ブランドの取り組みだ。いずれも世界的に不足する医療用マスクやガウンの生産に、相次ぎ名乗りを上げたのだ。
ルイ・ヴィトンはバッグなどレザーグッズを製造するフランス国内の5工場で、医療用防護マスクを生産する。週10万枚を目標に量産に取り組む工場内の様子は日本の報道番組でも紹介され、高い関心を集めた。マスクは地域の医療施設に提供している。
さらに同社はパリのアトリエでも医療用ガウンの製作をはじめた。AP-HP(パリおよびパリ近郊で運営されている公立医療センター)と呼ばれる「パリ公立病院連合」と連携し、6病院の医療従事者に提供する。
ルイ・ヴィトンではAP-HP公認の生地とパターン(型紙)を使ったガウンを数千枚規模で生産する。自動裁断機を持つパリのパターンカッターの協力を仰ぎ、在宅勤務の職人を参加させることで生地裁断のスピードアップを図る。
医療用のマスクやガウンは、立体的なパターンや複雑な縫製が施されており、高度なノウハウが必要だ。オートクチュール(高級注文服)などを手掛ける職人の技術力が、こうした分野でいかんなく発揮できるという。

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