寒くてもゼリーを売るには 新たな着眼点生む考え方第4回 商品の意外な使い方から考える 想定外用途法

◇ジョブ理論

顧客の視点で商品の価値を探り、そこからイノベーションを生み出す。そのための重要な示唆を提示したのが、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授による「ジョブ理論」です。顧客は「ジョブ(用事・仕事)」を片付けるために、その商品を「雇用」している。そのような視点で顧客の購買行動を分析する有効性が『ジョブ理論│イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(ハーパーコリンズ・ジャパン、クレイトン・クリステンセン他著)で提示されています。

あるファストフード店で、ミルクシェイクの売り上げを伸ばすために、調査を行いました。より多くの顧客に購入してもらうには、味の改良か、金額か、量か。ところが、ある顧客は、全く想定外の答えをします。車で通勤するその男性は、退屈なドライブの間に眠気覚ましになるちょうどよいお供として、ミルクシェイクを購入しているというのです。

さらに、「中身がどうとか、知ったことじゃない」とまで言うのです。つまり、ミルクシェイクは「運転のお供」という仕事のために「雇用」されたのであって、美味しいシェイクが飲みたいわけではなかったのです(もちろん、まずかったら売れないとは思いますが)。

ミルクシェイクの「運転のお供」というジョブにとって役に立つアイデアとして、例えば少し粘度を高めて長持ちさせるとか、果実の固まりを入れて眠気覚ましの刺激にする、といった方法が思いつきそうです。このように、商品の価値を、具体的にはっきり輪郭として示すのが、この「ジョブ理論」の特徴です。

企業は、「年齢」や「年収」などで顧客を分析しようとしますが、イノベーションを生み出すためには、そのような大きなくくりではなく、顧客一人ひとりが求めている「ジョブ」にこそヒントがあるのです。

さらに、顧客のジョブを発見するいくつかの方法の一つとして、本章と同様に「意外な使われ方」という視点が提示されています。

同書の中では、従来はパンを膨らますために使用されていたベーキングパウダー(重曹)を製造していた企業が、実は、顧客がベーキングパウダーを洗濯用洗剤に加えたり、歯磨き粉に混ぜたりと、「何かをきれいにする」という「ジョブ」のために「雇用」されていることを発見し、その視点で新しい事業を成長させたという事例が紹介されています。

全ての商品は、何となく購入されているわけでなく、顧客一人ひとりの何らかの「ジョブ」のために購入されている。そういう視点で世の中を見ると、人の数だけ「意外な使われ方」の可能性が広がっているとも考えられそうです。

岡田庄生
博報堂ブランドイノベーションデザインディレクター。1981年東京都生まれ。国際基督教大学卒、2004年博報堂入社。PR局などを経て、現職。14年に日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。共著に『博報堂のすごい打ち合わせ』など。

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