新型コロナが招く教育格差 9月入学・新学期の導入をダイバーシティ進化論(水無田気流)

画像はイメージ=PIXTA
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新型コロナウイルスの影響で、日本の教育現場も未曽有の危機に見舞われている。文部科学省によれば、4月22日現在、全国の幼稚園・小・中・高校及び特別支援学校等の91%が臨時休校している。

大学・高等専門学校は、4月23日現在、授業開始時期を延期したのは9割に上る。教育活動維持のため遠隔授業への期待は高い。全国の大学・高等専門学校のうち同日段階で遠隔授業を決定したのは59.5%、検討中を含めると98.7%が導入の方向に動いている。

実は筆者も、一大学教員として遠隔授業の準備に追われている。今期の受講生に不利益が出ないよう細心の注意を払っているが、私見ではこの混乱した状況下、全ての大学・高等専門学校の授業で、本来対面式授業に最適化した授業を遠隔授業に改訂し、同程度の教育的成果を出せるのか。

そもそも、文科省が定める4年制大学の必要単位数124単位のうち、遠隔授業などで認定されるのは60単位と半分以下。事態が長期化すれば、この規定も見直しが必要だ。

遠隔授業のノウハウを蓄積する価値は大いにある。ただ全面的に依拠するには教科により向き不向きの差は大きく、学生や教員の私的なインフラへの依存度が高いのは問題だ。

筆者も学生に受講環境の確認を取ったが、「兄弟と同室なので双方向授業は難しい」など、切実な事情を訴える学生も散見した。生徒や学生の私的な住環境やインターネット接続環境格差が、教育格差に直結する恐れもある。とくに、来冬受験生間で不公平が生じてはならない。

提案だが、ここまで全国で教育活動が「一斉停止」になってしまったからには、いっそかねて議論されてきた「9月入学・新学期」に踏み切るのはどうだろう。世界的には9月新学期が一般的であり、すでに一部の大学も帰国子女その他の事情に鑑みて、9月入学を取り入れている。留学や海外での就職などに利点も多い。

そもそも、今年度の共通テストでは、準備不足から民間英語試験が見送られるなど問題は山積だ。今後も、変更などで受験生に負担を負わせるのは避けたい。現在、ネット上でも9月入学変更要請の声が上がりつつあり、文科省も検討を始めているという。就業時期との兼ね合いなど調整事項は多々あるが、乗り越える価値はあるはずだ。

水無田気流
1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

[日本経済新聞朝刊2020年5月4日付]

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