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果物が食べられなくなる? 人知れず数を減らす昆虫

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ナショナルジオグラフィック日本版

春になって昆虫たちの姿を見かけることが多くなった。今、昆虫たちの個体数が減っていることをご存じだろうか? 昆虫が生態系で果たしている役割は多く、身近なところでは受粉もミツバチなしではできない。ミツバチが姿を消したら、農業もたちいかなくなる。ナショナル ジオグラフィック2020年5月号では、急速に数を減らしている昆虫に焦点をあて、その原因を探っている。

◇   ◇   ◇

人類が地球に影響を及ぼす時代という意味で、現代は「人新世」と呼ばれている。だがそれでも、さまざまな意味で世界を支配しているのは昆虫だ。推定で1000京(1兆の1000万倍)もの数の虫たちが、至るところで飛び、はい回り、宙に舞い、行進し、穴を掘り、泳いでいる。

さらに昆虫は種類の多さでも抜きん出ていて、動物の全種類のうち約80%を占めている。知っての通り、現在の地球環境が維持できているのは昆虫のおかげだ。彼らが花粉を運んでくれないと、花を咲かせる植物はほぼ全滅してしまう。

生物学者のエドワード・O・ウィルソンはいみじくもこう指摘している。もし、人類が突然姿を消しても、地球は「1万年前の、バランスがとれた豊かな環境を取り戻すだけだ。しかし昆虫がいなくなれば大混乱に陥る」と。

ドイツ、クレーフェルト昆虫学会は、20年以上にわたってドイツ国内のさまざまな保護区における昆虫の状況を調査している。ネットをテント状に張った「マレーズトラップ」という仕掛けで、、ハエやハチ、ガ、チョウ、クサカゲロウなど、飛び込んできた昆虫を上部に設置した瓶の中へ集めて捕らえるのだ。

こうして集めた調査を、ほかの研究者や統計の専門家に協力を仰いで分析したところ、1989年から2016年までに、国内の保護区に生息する飛翔昆虫の総重量がなんと76%も減少していることが判明した。

これをきっかけに、世界中の昆虫学者は過去の記録や標本の洗い出しを始めた。劇的な変化を伝える研究は専門誌に掲載されやすいという指摘もあるが、それでも背筋が寒くなるような結果が次々と明らかになっている。米国ニューハンプシャー州の保護区の森では、1970年代半ばから甲虫が80%以上減少し、昆虫の多様性は40%近く低下したと報告されている。

ほかにもオランダではチョウの個体数が19世紀末に比べて約85%失われ、米国中西部ではカゲロウの個体数が2012年の半分以下になっていた。

昆虫は地球上でずば抜けて種類の多い生き物だ。その正確な数を把握するのに、いまだに研究者は悪戦苦闘している。これまでに命名された昆虫はおよそ100万種だが、未発見の種はもっと多く、最近の推計ではさらに400万種がいるとも考えられている。

なぜ昆虫はこれほど種類が多いのか。その理由についてはいろいろな説があるが、歴史が古いからというのが最も単純な説明だろう。その古さは並外れている。恐竜が地球上に現れるよりも2億年近くも早く、実に4億年以上前に陸地にすみついた最古の生き物の一つなのだ。こうした長い歴史のなかで、昆虫は多様性を育んでいった。

昆虫の絶滅率の低さも理由に挙げられる。少なくともこれまでは低かった。数年前、甲虫類最大のカブトムシ亜目の化石記録を調べたところ、この亜目は絶滅した科が皆無で、6600万年前の白亜紀末に起きた大量絶滅も生き延びていたことが判明した。それだけに、近年の激減ぶりがいっそう不吉に思えてくる。

昆虫は数えきれない仕事をこなしているが、正当に評価されることはほとんどなかった。顕花植物のおよそ4分の3は、ハチやチョウといった昆虫たちに受粉を頼っている。リンゴからスイカまで、果物のほとんどは花粉を運ぶ昆虫がいないと結実できない。

種子を散布するのも昆虫の重要な役割だ。植物の多くは種子に「エライオソーム」と呼ばれる脂肪などの栄養を付着させる。種子を運んだアリはおいしいエライオソームだけ食べて、残りは放置する。こうして種子は離れた場所で発芽するのだ。

また昆虫は、淡水魚のほか、ほぼすべての陸生動物の食べ物になる。雑食の鳥も、幼鳥のときは昆虫が大切な栄養源だ。北米に生息する鳥も急減しており、1970年に比べてほぼ3分の1になっていることが最近の調査でわかった。減少が深刻な鳥のなかには、昆虫を多く食べる種が含まれている。

有機物を分解する昆虫は、生命の循環にも一役買っている。フンチュウは栄養分を土壌に還元するのを助け、シロアリも同様に木を食べて土に戻している。昆虫がいなければ、人間を含む生き物の死骸は分解されずに積み上がっていくばかりだろう。

またある種の寄生昆虫は、農作物を食べるイモムシが過剰に増えるのを防いでいる。そのため、個体数が減少すれば、農業の被害が大きくなると考えられる。もし、イモムシと寄生昆虫の相互作用が減っていれば、人間の知らないところで食物連鎖が崩れている可能性がある。

この不吉な流れを逆転させるために、一体何ができるのか。もちろんそれは、何が原因かによって変わってくる。もし、気候変動が主要因であれば、地球規模で温室効果ガスの排出を減らす努力をすることが、実際に変化を起こす唯一の方法のように思える。農薬や生息域の消失が原因ならば、地方や地域単位での取り組みが、大きな効果を上げると考えられる。

欧州連合(EU)は送粉昆虫を守る試みとして、ネオニコチノイド系農薬の大半を使用禁止にした。この農薬と昆虫や鳥の減少との関連が、複数の研究で指摘されているためだ。

(文 エリザベス・コルバート、写真 デビット・リトシュワガー、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年5月号の記事を再構成]

[参考]ここでダイジェストで紹介した「昆虫たちはどこに消えた」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2020年5月号の特集の1つです。また自閉症の今に焦点をあてた「大人の自閉症」「自閉症の兆候を見つける」、数千年にわたって受け継がれてきた「移牧」、チリとアルゼンチンの広大な土地を買って両国に寄贈し、自然公園にしてもらおうという米国人夫妻の取り組みを追った「南米 大自然の贈り物」なども収録しています。

ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年5月号[雑誌]

出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,210円 (税込み)

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