コロナ禍が転職検討のきっかけに

――転職者側の動向は。

「社会全体が自粛モードに入り、企業の採用活動が止まったのではないかと懸念し、『今は転職活動を控えたほうがいいか』という問い合わせがある半面、転職相談のために初めてコンタクトしてくる人も増加しています。3月に実施した転職相談のウェブ面談数は1月に比べ4倍と大きく伸びました。在宅勤務などに急きょ切り替わった企業も多く、働き方や仕事を見つめ直すきっかけになっているほか、なかなか在宅勤務が認められなかった企業に勤める人が柔軟な働き方のできる企業に転職したいと活動し始めるケースも目立ちます」

JACリクルートメントの黒澤敏浩プリンシパルアナリスト

「今後の中途採用の求人が増えるか否かはまだ不透明ですが、中途採用環境が悪化した場合に備え、現在就いている仕事とは異なる業種・職種の仕事に転職したい人は今のうちに動いてしまうのも得策かもしれません。通常、企業は経験者を求めますが、好景気で転職においても『売り手市場』の時代は、経験者に限定すると人員補充ができないので、未経験採用にも門戸を開く企業が増えます。今後、景気が悪くなれば、業種、職種とも経験者に限定されていく可能性があります」

――この状況で転職を検討する場合に注意したいポイントは。

「非常時ではありますが、転職についての注意点は平常時と同じで、必ず転職先の内定をもらってから今の会社を退職するというのが鉄則です(体調悪化など一部の例外は除く)。転職の際の年収は基本的に前職と同水準をベースに交渉していくという企業が多いですが、先に退社し無職になってしまうと、転職先企業が比較するベースが『無給』ということになります。前職より年収が下がったとしても『ゼロよりまし』とみなされ、不利な状況に追い込まれかねないので、必ず退社するよりも先に内定をとることを強くおすすめします」

――転職希望者が今、学んでおくと良いことはありますか。

「何か新しいことを勉強するより、担当している業務の専門分野を深めると良いでしょう。外出が難しい日々が続く中、空いた時間で新しいスキルを習得したり、自身の属する業界の歴史を学んだりすることをおすすめします。仕事で使う分野のスキルはすぐに実践で使うことができるのに加え、関連知識が増えると、広い視野を持つことにもつながります。オンライン会議などの機会が増えていると思いますが、今後、長い目でみると、業務のオンライン化は確実に進むので、ビジネスパーソンとして慣れておくにこしたことはないです」

「中途採用のポジションは、個別性が高く自分に合った求人は1件あれば十分です。現在の自身の職業が『世間的に需要が少ない』『つぶしがきかない』とあきらめる必要はありません。希望のポジションがどういった企業、業種にあるか、これまでの経歴を最も評価してくれそうな企業はどこかなどを、転職エージェントなどの専門家と相談しながら、満足のいく転職活動を進めてほしいと思います」

黒澤敏浩
JACリクルートメント プリンシパルアナリスト。2002年ジェイエイシージャパン(現JACリクルートメント)入社。リクルートメントコンサルタント、人事・事業企画担当などを経て現職。専門分野はグローバルホワイトカラー中途採用マーケット分析。

(日経キャリアNET編集チーム 宮下奈緒子)