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万年氷が解けたら 現れたバイキング時代1000点の遺物

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ナショナルジオグラフィック日本版

始まりは、1800年前の衣服だった。ノルウェー南部の山の、氷が解けた跡から古代のウール製チュニックが発見された。貴重な遺物を同僚が梱包している間、考古学者ラース・ホルガー・ピロ氏は、もう1人の同僚とともに霧に包まれた氷の跡をたどっていった。

薄暗い中に目を凝らしたピロ氏は、気がついた。今、見ているのは、何百年もの間、日の目を見ることのなかった遺物の散らばる原野なのだと。壊れたそりや道具など、2000年近く前の生活の痕跡が、地球温暖化により急速に解けゆくレンブレーン氷原に点々と散らばって埋もれていたのだ。

「本当に特別な物を見つけたことに気がつきました。大鉱脈を掘り当てたようなものです」とノルウェー、オップラン県で氷河考古学プログラムを率いるピロ氏は話す。

ピロ氏たちのチームは、見つかった遺物について2020年4月16日付の学術誌「Antiquity」に発表した。当時のまま文字通り「凍結」された遺物が、1000点以上も発見されたのだ。

遺物は、西暦300~1500年ごろの、峠の街道の様子を物語る。この道は、オッタ川沿いの居住地と高地にある夏の農場を移動するのに使われたと見られる。荒野を行き交う旅人たちは、蹄鉄から調理器具、衣料品まで、あらゆる物を残していった。こうして忘れ去られた物の上に何世紀にもわたって雪が降り積もり、最終的にレンブレーン氷原となった氷の中で保存されたのだ。

この氷(アイスパッチ)は、標高の高い場所に位置し、氷河とは似て非なるものだ。氷河に閉じ込められた物は、移動する氷塊に揉まれ、やがて粉々になってしまう。だがアイスパッチは動かない。そのため遺物は、氷が解けるまで、極めて良好な保存状態でそのままの位置に残される。

ピロ氏らは、今回見つかった1000個の遺物のうち60個について、放射性炭素による年代測定を行った。結果、この峠で人間活動が始まったのは、良好な気候条件に恵まれ、地域の人口が急増した西暦300年頃だったことが明らかになった。人の往来は、バイキングの時代の西暦1000年頃にピークに達したが、経済や気候の変化により、1340年代に黒死病(ペスト)がノルウェー中で猛威を振るう前から、すでに減少傾向にあった。

謎の遺物の正体は

レンブレーン氷原で見つかった遺物には、そりや、珍しく完全に残っている3世紀のウールのチュニック、ミトン、靴、かくはん器などの日用品が含まれていた。ピロ氏のお気に入りの1つは謎の物体だったが、地元の博物館に展示した際、年配の女性が説明してくれて初めて詳細が判明した。それは丸く削られた小さな木の棒で、子ヤギや子ヒツジが母親の乳を飲まないようにくわえさせるハミとして使われた可能性が高いという。ヤギやヒツジのミルクを人が利用するためだ。

この女性は、1930年代に夏の農場に住んでいたことがあり、彼女の家では硬いビャクシンの木から作ったハミを使っていたと語った。それは、11世紀の遺物とほぼ同じに見えたという。さらに、1000年前のハミも、ビャクシン製であることがわかった。

また、レンブレーン峠は、農家が季節毎に牧草地を行き来するための、単なる地元の通り道ではなかったようだ。ピロ氏らの研究チームは、石を積み上げたケルンをいくつも発見した。ケルンは、この地域に不慣れな人でも峠を見つけられるよう、スカンジナビア半島のあちこちを移動する長旅における道標となるよう作られたものだ。

蹄鉄や馬用のかんじきに加えて、ケルンまで発見された事実は、この氷原がおよそ1000年の間、人通りの多い旅の「動脈」として利用されていたことの「非常に説得力のある」証拠だとピロ氏は言う。このような峠が北欧で見つかったのは、このノルウェーの遺跡が初めてのことだ。

スイスのベルン大学の氷河考古学者アルバート・ハフナー氏も、この意見に同意する。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。「論拠は極めて明確だと思います」とハフナー氏。同氏は2003年、スイスアルプスのシュニデヨッホ氷原で、紀元前4800年までさかのぼる遺物を何百個も発見した。シュニデヨッホも山道として使われていた。「似たような遺跡がスカンジナビアにもあるとは、非常に興味深いです」と同氏は話す。

遺物を保管してきた氷が解けている

今回の論文は、2015年までに発見された遺物に焦点を当てており、さらに数百の遺物に関して、これから年代測定と科学的な説明が行われる。また、なぜ峠が旅人に放棄されたのかという疑問は残る。「黒死病のパンデミックの前には、すでに衰退が始まっていました。しかし、それをうまく説明できないのです」とピロ氏は話す。峠の最盛期は、この地域で交易が増え、都市化が進んだ時期と一致する。峠が栄えていたということは、山々を迅速に通り抜ける必要があったということだ。

ピロ氏は、レンブレーン峠での調査を2019年に終え、現在、ノルウェー中の氷原が大規模に融解するなかであらわになりつつある他の遺物を探している。遺物は、「基本的には、先史時代の巨大な冷凍庫に保管されています」と同氏は話す。「経年劣化することがないのです。時々、氷はタイムマシンだと冗談で言いますが、単なる冗談ではありません。氷は、遺物を現代に送り届けてくれます」

しかしながら、その遺物を受け取るためには、氷が解けなければならない。気候変動や夏の酷暑に直面し、ノルウェーの雪氷圏がすでに消えつつあることを考えると、奇跡のような発見があっても、その度にほろ苦い気持ちになる。

「研究の際は作業に集中しようとしていますが、こうした遺物が次々に見つかるのです」とピロ氏は語る。「不吉な予感を覚えずにはいられません」

次ページでも、発掘現場の昔と今、そして今回、出土した遺物をご覧いただこう。

(文 ERIN BLAKEMORE、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年4月21日付の記事を再構成]

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