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海上自衛隊の習慣、「金曜日のカレー」で曜日感覚を取り戻す=PIXTA

「南極昭和基地の厨房では真空パックにする機械があり、重宝していました。お持ちでないご家庭ではビニール袋に食材を入れて水の中に沈めて、袋の口をしばると真空に近くなります」

水の中に沈めるのは水圧で袋の中の空気が抜けるため。食品に空気が触れない真空状態にすることで、食品の酸化や乾燥、いわゆる「冷凍焼け」を防ぐことができる。

「日持ちするメニューを作るなら、砂糖やハチミツなどの甘味や酢が入っているものがお薦めです。なますや煮物など、おせち料理を思い出していただければと思います。あと、酢を使った料理にピクルスがありますが、ミョウガやタケノコ、ウズラの卵などで作ってもおいしいです」と島田さん。

念を押すが、以上のアドバイスは「食料の買いだめ」を推奨するものではない。東京都の小池百合子知事は「買い物は3日に1度程度に」と要請している。が、家族の人数や冷蔵庫の大きさ、車のある・なしによっても買い物の適正な頻度は変わってくるだろう。

ただ、スーパーでの滞在時間が短くなれば感染のリスクも少なくなるのは確か。あらかじめ作るメニューを決め、購入するものをリストアップしておけば買い物時間は短くなる。メニュー決めの際には是非これらのアドバイスを参考にしていただきたい。

ほかにも、南極での生活にはさまざまな知恵やヒントが詰まっていた。例えば、当時の昭和基地での人気メニューを聞いたところ、「すき焼き」「土曜日のラーメン」「金曜日のカレー」「生卵かけごはん」などが挙がった。

「すき焼きは、浅草の老舗のお店に割り下をいただいて、のれんをお借りしました。のれんを食堂にかけて、その老舗すき焼き店の南極支店ということで、牛肉食べ放題のイベントを3回ほどやりました。隊員から大好評でしたね」

そういえば先日、外出自粛で外に飲みに行けない夫のために妻が手作り居酒屋メニューを書いて「自宅居酒屋」をしてくれたというツイッターが話題となった。こうして家でお店屋さんごっこをするのも楽しいかもしれない。

それと、南極恒例行事に「流しそうめん」がある。これは氷山に溝を掘ってそうめんを流すというダイナミックなもの。

「実はこのとき、すでにそうめんを使いすぎてしまい、代用でそばを流しました。結果的には、白いそうめんよりもそばのほうが見えやすくてよかったようです。どんなときでも目線を少し変えて作るのも面白いものです」

食にイベント性や遊び心を持たせること、どんな状況でも楽しむことはこの閉塞的な状況下でメンタルヘルスを保つ重要なポイントといえるだろう。

また、在宅ワークで平日も週末も関係なく家にいることで「曜日感覚がなくなる」という話もよく聞く。これも南極観測隊のように「金曜日はカレーの日」「土曜日はラーメンの日」などと決めておくといいかもしれない。金曜日のカレーはもともと海上自衛隊の習慣で、南極観測隊にも引き継がれているようだ。

それと、南極に到着したばかりの12月は太陽が沈まず、体内時計が狂いがちという。それを正しくセットするために「必ず朝食は摂るよう、隊員に言っていました」と島田さん。食は栄養摂取やコミュニケーションツールだけではなく、曜日感覚や体内時計を調整する重要な役割もあるのだと改めて気づいた。

観測船「しらせ」でも昭和基地でも激しいブリザードのときなどは艦長や隊長から「外出禁止令」が出ることもあったという。そのようなときには「隊員たちはそれぞれ普段では出来ないことをしていました。たとえば筋力トレーニング・作詩・読書などです。このような時だからこそ今まで手を出さなかったことにチャレンジするのもよいのではないでしょうか。現在の職場、ココネの社員にも普段作らないような料理を作るようにアドバイスしています」(島田さん)とのこと。

また、「食は楽しんで作らなければ食べる側も楽しめない」というのが島田さんの持論。外出自粛中のストレスや心身の不調を料理を楽しむことで解消しつつ、作るのがつらくなってきたときには無理せず飲食店のテークアウトやデリバリーを利用してみよう。

(ライター 柏木珠希)


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