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コロナ後に足を運びたい 東京で勢いあるウワサの2店

メニューは「宍道湖しじみ中華蕎麦(塩)」と「地鶏としじみの中華蕎麦(醤油)」の2種類。いずれも甲乙つけがたい

「『ほん田』での修業時代に出あった『蜆(しじみ)ラーメン』の味に感銘を受けましてね。それが、蜆を用いたラーメンを作りたいと思ったキッカケです」。その後も、その時に抱いた鮮烈な印象が脳裏から離れず、『琥珀』の開業に向けてラーメンを開発するに当たり、何のためらいもなく、出汁に用いる素材の主役として「蜆」を指名。全国各地の産地から蜆を取り寄せ、それぞれの持ち味を徹底的に研究したという。最終的には島根県・宍道湖へと赴き、業者に自らの経営ビジョンを熱く語ることで、低コストでの仕入れを実現した。

「開発の過程で、自分が手掛ける中華そばと最も相性が良い蜆は、宍道湖産だと確信。経営ビジョンについて業者さんからの賛同が得られた時は、飛び上がるほどうれしかったですよ」。長年にわたる蜆への想いが結実した瞬間だった。

スープが口内へと飛び込んだ刹那、気品ある蜆の香りがそよ風のように鼻腔(びこう)へと駆け抜け、間髪を入れず、貝由来のコハク酸のうま味が味蕾(みらい)をしっとりと潤す。「中華蕎麦(醤油)」のスープにあっては、地鶏に由来するイノシン酸の滋味が、食べ手の味覚に更なる追い打ちをかける。スープが喉元に触れた後の余韻から演繹(えんえき)れる岩田店主の技量の高さは、並大抵のものではない。食べ手は鳥肌を立てるしか為す術がない。

スープに加え麺もまた、こだわりの塊だ。

名門『菅野製麺所』から多種多様なサンプル品を取り寄せ、試食を重ねた上で厳選。「細麺」と「手もみ太麺」の2種類から指定できるが、特におススメが手揉(も)み麺。

「この手揉み麺は、『菅野製麺』の全面協力の下、半年近くの時間を掛けて完成にこぎつけました」。まさに、心血を注いで創り上げた会心作だ。

多加水麺だとはにわかには信じられないほど、スープのうま味をよく吸収する手揉み麺は、スープを持ち上げるというより、スープを「その身に纏(まと)う」というイメージがふさわしい。まさに『琥珀』ならではの絶品だ。

ひと啜(すす)りする度に加速化する箸を持つ手に、食べ手は脱帽すること必至だろう。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。
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