チェルノブイリ原発事故をドラマ化 レンタル人気1位
2020年3月 海外ドラマ月間レンタルランキング
海外ドラマで近年本数が増えているジャンルが、実際にあった事件を基にした実録ドラマ。なかでも最大のヒットとなっているのが、1986年に旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で起きた事故を描いた『チェルノブイリ-CHERNOBYL-』だ。 TSUTAYA海外ドラマ月間レンタルランキングでは3月度の1位で初登場した。
『チェルノブイリ-CHERNOBYL-』は『ゲーム・オブ・スローンズ』を送り出した米大手ケーブル局HBOが製作にあたり、2019年5月に全米放送した全5話のミニシリーズ。実録ドラマとしてのリアリティーや完成度の高さが大きな話題となり、同年のエミー賞ではリミテッドシリーズ作品賞をはじめ10部門で受賞するなど絶賛を浴びた。
物語は、原発事故から2年後、事故の調査にあたった科学者ヴァレリー・レガソフがありのままの真実をテープに録音し終え、自らの命を絶つところから始まる。そして彼のテープを再生するように、86年4月26日未明の事故発生時の様子から、翌年法廷で事故の原因とその後の対応の一部始終が明かされるまでを描く。事故当時の緊迫感や、発電所幹部や旧ソ連当局が事態を隠ぺいしようとしたさまがリアルに再現されているのが見どころだ。
監督は『ウォーキング・デッド』『ブレイキング・バッド』を手がけたヨハン・レンク。綿密な取材に基づいて事故の一部始終を描き上げた。チェルノブイリ原発とその周辺地域は30年以上が過ぎた今でも立ち入り禁止区域となっているため、景観が似ているリトアニアでロケを遂行。廃炉となった原発の内部で撮影をした。爆発した原子炉やプリピャチなど近隣の街並みは高度なCG技術で再現しており、生々しい映像となっている。
キャストは、事故の調査にあたる科学者レガソフ役にジャレッド・ハリス、ゴルバチョフ書記長に現場の対応を任された副議長ボリス・シチェルビナ役にステラン・スカルスガルド、事故の真相解明に奔走した多くの核物理学者からインスパイアされた架空のキャラクター、ウラナ・ホミュック役にエミリー・ワトソン。3人の演技派キャストが、物語の中心人物を重厚に演じている。
若い世代にまで認知が広がる
蔦屋書店 商品企画本部 映像レンタルの後藤信之氏によると、「実話・実録ものは映画を含めて、作品の高い評価にレンタルの実績がいまひとつ伴っていませんでしたが、『チェルノブイリ-CHERNOBYL-』は3月度で圧倒的な1位となるなど、断トツの実績です」。レンタルユーザーの男女比は7対3、世代別はボリュームゾーンが40~50代で、40代がメインという。他の実話・実録ものは50代以上がボリュームゾーンなので、若い世代にまでに認知が広がったのが特徴だ。「クオリティーの高さに自信があったので、積極的にキャンペーンを推進。1巻さえ見ていただければ、全5話を一気に見ていただけると思い、『1巻をレンタルしたらもれなくポイント10倍!』キャンペーンを実施しました。その効果もあって30~40代の方に多く利用していただけたことが、高い実績につながりました」(後藤氏)
『チェルノブイリ-CHERNOBYL-』は日本では昨年9月、エミー賞の発表直後に初放送されて、まず注目を浴びた。今回DVDがリリースされた3月は、9年前に東日本大震災が起こった月。福島第1原子力発電所事故の記憶もまだ新しいとあって、本作の内容はより身近な問題として受け止められたようだ。レンタルでの高い人気は続いているので、ロングラン化して今年を代表する海外ドラマのヒット作となりそうだ。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
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