「がん患者支える」責任感が原動力 秋山正子さんマギーズ東京共同代表理事(折れないキャリア)

がん患者や家族が無料で悩みを相談したり、専門家の意見を聞いたりできる場として2016年に東京・豊洲に開設したマギーズ東京の共同代表理事を務める。日本で訪問看護が珍しかった1990年代に普及に奔走した第一人者だ。「市ケ谷のマザーテレサ」と呼ばれ、19年に看護師にとって最高の栄誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章を受章した。

あきやま・まさこ 1950年秋田県生まれ、聖路加看護大学卒。東京女子医科大学非常勤講師などを務める。

看護師になったのは父親をがんで亡くしたのがきっかけだった。訪問看護を志したのは40代になった頃。がんにかかった2歳年上の姉の元に片道2時間かけて訪問する医師と、自宅で夫や子どもに囲まれながら安心して最期の日々を送る姉を見て必要性を実感した。

医療法人の下で訪問看護を始めるも、01年に事業が継続できなくなった。60人の患者や家族へのサービス提供が難しくなるなか、「地縁はお金では買えない財産。事業を止めるわけにはいかない」と担当看護師らで議論し、ケアーズ・白十字訪問看護ステーションを設立して引き継いだ。

経営に関しては素人同然。銀行に融資を頼もうとしても「経営のことをよく知らない女性が来た」とみなされ、面談日程すらスムーズに調整されない。全職員が女性なのに銀行には「男性の連帯保証人が必要だ」といわれた。大学教授をしていた夫に頼み込み渋々連帯保証人になってもらい、立ち上げ後の資金繰りをやりくりした。「この頃が今までで一番つらかった」

現在のようなキャリアは「全く想像していなかった」と笑う。ここまで続けてきたのは、数多くの患者のみとりを通じて得た「立ち会ってきた命の輝きや人生の奇跡を、語り継ぐ責任がある」との思いからだ。終末期のがん患者らと関わるなかで、英国発祥のがん患者のための相談拠点を日本にも作りたいと考えマギーズ東京を設立。訪問者は累計2万人を超えた。

マギーズ東京に相談に来る4分の3が女性だ。子育て中や働きながら治療を続ける人も多く「現代女性は頑張りすぎている」と話す。「誰かに頼ったり相談したりすることは悪いことでも、あなたに能力がないわけでもない」。全部自分でやろうとして押しつぶされる前に、荷物をいったん棚卸しして等身大で向き合える場所を作ることが大切だと話す。

(聞き手は佐藤初姫)

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