国内累計48万台と想定外のヒットを飛ばした軽SUVのハスラーが、2020年1月にモデルチェンジした。人気モデルの後継車は、どのくらい新しさを盛り込むのか、さじ加減が難しい。果たして新型ハスラーは、先代同様の人気を維持し続けられるのか。新型に潜む意外なリスクを、小沢コージ氏が指摘する。
初代ハスラー担当デザイナーの本音
「2代目は少しタフで大人っぽくなりましたね。初代は味付けが多少甘過ぎたかな?と思っていましたが、そこが払拭されました。半面、分かりやすい「かわいげ」が無くなりましたが、そんなものは、このジェンダーレスの時代にはお呼びでないのかもしれません(笑)」と小沢に語ってくれたのは、初代ハスラーのデザインを担当した元スズキのH教授。この言葉は、案外本質を突いているのではないかと小沢は考える。
そんな新型ハスラーだが、滑り出しは好調だ。今後は新型コロナウイルスの影響で台数が落ちるに違いないが、20年3月の軽自動車販売ランキングでは月販1万台を超え、総合6位にランクイン。高いルーフとヒンジドアを持つ軽トールワゴンの中で比べても、ダイハツ・ムーヴ、日産・デイズに次ぐ位置につけ、このジャンルの元祖であるスズキ・ワゴンRを完全に食っている。
新型の人気の要因のひとつには、新世代プラットホームをベースに大幅強化したボディーと、それらがもたらす進化した質感がある。スズキ初の構造用接着剤や高減衰マスチックシーラー(振動低減効果がある接着剤)を使い、アッパーボディーには環状骨格構造も採用している。その結果、走りのしっとり感や剛性感は旧型とは雲泥の違いで、走り始めから高級感が伝わってくるし、静粛性も向上した。
エンジンとギアボックスのCVT(無段変速機)も新設計。エンジンはロングストローク化して、同社の軽自動車では初のデュアルインジェクションを導入。効率アップを目指した結果ノンターボの出力は49馬力に落ちたものの、不足分をマイルドハイブリッドで補うことで、走りと燃費を見事に両立させている。
より本格派4WDテイストになった新型
一方、小沢が「勝負に出ている」と感じたのがエクステリア(外装)だ。丸目ライトにフチ取りが付いた独特のフロントマスクはキープ。同時にメッキのフチ取りが太くなり、目ヂカラが増した。
ところが全体のフォルムに、かつての癒やしの雰囲気というか、ゆるキャラっぽさがない。担当デザイナーの高羽則明氏に聞いたところ「ハスラーらしさを残しながら、より本格派4WDの方向に向かっています」という。具体的には車高が上がり、リアウインドーが立ち、フォルムが四角くなった。特に2トーンカラー車は後ろの部分が樹脂カラーに変わり、リアピラーに小さな窓も入って、よりジープに似てきた。よりワイルドな見た目を獲得しているのだ。
なぜスズキはハスラーをより本格派に仕立てたのか。その背景について高羽氏は「今、再びアウトドアブームが来ているため」と説明する。「街を調査したところ、人々が使っている道具や服が本格化しているのを感じました。例えば、マイナス数十度に耐えられるようなダウンを街着として着ている人もいました」(高羽氏)。初代ハスラーが登場した2014年と比べて、人々はよりアウトドア志向になり、好む道具も本格化している。新型ハスラーのデザインは、そんな人々の好みの変化に合わせたというわけだ。
より本格派になったフォルムに加え、ボディーカラーもアウトドアテイストを意識。これまでのポップなアニメ調ではなく、アウトドアジャケットに多く使われる濃いオレンジや、ジーンズに似たデニムブルーが選べるようになった。