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寝転んでのスマホ操作はNG、睡眠の質に影響することも

家の中でスマートフォンやゲームなどに夢中になっている子供も少なくないだろう。

――安河内さん「それが、一番心配なところです。子供の目の水晶体は透き通っているので、網膜に届く光の量が多いのです。子供は成人より、光の影響をより強く受けやすいという報告もあります。注意をした方がよいですね」

パソコンやスマートフォンなどの光は、それほど強くないようにも思える。

――安河内さん「ディスプレーを明るくしても、せいぜい約45ルクス。室内照明が150~200ルクスですから、それに比べてかなり弱い光ではありますが、覚醒につながる青色系の波長を多く含みます。それが近い距離で目に入るわけですから、ディスプレーの光の影響力は無視できません。実際、睡眠前のゲームが睡眠の質に影響するという報告があります」

子供に限らず大人でも、ベッドの中で横になりながらスマートフォン操作をするのがクセになっている人も少なくないだろう。

写真はイメージ=(c) Leung Cho Pan-123RF

――安河内さん「横になりながらのスマートフォン操作でも同様です。起きている時よりも液晶画面がさらに目に近づく分、光の影響力が大きくなり、睡眠の質の悪化が考えられます。いずれにしろ、就寝前のゲームやネット閲覧が睡眠に悪影響を与えることは、多くの研究結果から報告されていますので、気をつけていただきたいですね」

就寝2時間前が難しいなら、「少なくとも30分~1時間前には照明を切り替え、同時にゲームやスマートフォン操作もやめて眠るための準備やくつろぎ時間にあてる」というふうに決めておくのが、家族の健康を守ることにつながりそうだ。

――安河内さん「現代人の多くのストレスは、長い間人類が当たり前のように生活してきたスタイルとかけ離れた時に起こります。ご家族の健康を考慮して光を見直すことは大切です」

家の中で過ごす時間が増えると、これまでとは違う「ズレ」が生じ、それが不眠やストレスにつながる。この機会に「光を浴びるタイミング」「光の色」「行動」の「3つのズレ」がないかを見直して、光を上手に使いながらストレスを解消し、健康な生活を目指してみてはいかがだろう。

【「光」を味方にして体内リズムを整える5つのルール】
(1)起床時には意識して朝日を浴びること

(2)朝食は大豆製品や乳製品、魚卵、レバー、バナナなどを意識してとる

(3)日中はできるだけ明るい窓際で作業して光不足を補う

(4)就寝30分前には、照明を暖色系の電球色の光に変える

(5)就寝前のゲームや、ベッドの中でのスマホ操作はNG
安河内朗さん
九州大学名誉教授 日本生理人類学会会長。1976年九州芸術工科大学卒業後、大学院などを経て同大工業設計学科助手。1982年~90年労働省産業医学総合研究所、86年理学博士(京都大学)取得。90年九州芸術工科大学助教授、99年同教授、九州大学統合後の2005~18年九州大学大学院芸術工学研究院長に加え、08~10年九州大学副学長、09~18年同大主幹教授、学部長を経て現職。専門は生理人類学、人間工学。
結城未来
エッセイスト・フリーアナウンサー。テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。

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