新型コロナウイルスによる「コロナショック」で疲弊感あふれる昨今。「ストレス」を訴える声も少なくない。特に家の中にいる時間が長引くほど、生活のリズムは乱れがちになりイライラ感もつのる。リズムが乱れると睡眠に影響が出て、いずれ体調を崩してしまうことになる。今回は、健康ジャーナリストの結城未来が、コロナストレスを解消するためのルールについて専門家に聞いてみた。
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太陽光・照明・スマートフォン・パソコン・ゲームなど、私たちの周辺には「光」があふれている。どうやら無意識に浴びているこの「光」の使い方を正すことが家の中でも健康に過ごすための重要なカギになりそうだ。では、その「光」をどうやってコントロールすればいいのか? 環境が人の体にどう影響を及ぼすかを研究し続けている九州大学名誉教授の安河内朗さんからその方法を教わろう。
安河内さんは開口一番、こう語った。
――安河内さん「思い通りに外に出られなくなった時に心配なのは、間違ったタイミングで光を浴びることによる不調ですね」
「間違ったタイミングで光を浴びる」? それで「不調」になる? どういうことだろうか?
――安河内さん「私たちには約24時間の周期を持つ体内リズム(概日リズム)が備わっていますが、このリズムに合わないタイミングで光を浴びてしまうと、不調につながるという意味です」
適切なタイミングで光を浴びなければ睡眠の質の低下から始まり、心の病への扉を開きかねないというのだ。体内リズムは光の影響を受けるものなのだろうか?
――安河内さん「光には大きな影響力があります。そもそも人類は長い間自然光の明暗のリズムに合わせて生活をしてきました。明るい日中に活動し、夕日の時間になると活動をやめ、暗くなると睡眠に入るという生活を何万年も繰り返してきましたので、光の指令によって体内がギアチェンジするようになっています。具体的には、日中のように青色系の波長を多く含む白い光では覚醒レベルが上がり交感神経活動が優位になるので、体が活動的に。夕日のように赤色系の波長が多い温かみのある柔らかい光では、覚醒レベルが下がり副交感神経活動が優位になってリラックス。覚醒と睡眠、ホルモンや体温など、体内にあるリズムをスムーズにし、健康を保つために、光は欠かせません」
体内リズムの「ズレ」を生む3つの要素とは?
人類の歴史を1日24時間に例えた時に、産業革命以降の歴史はほんの3秒程度にしかならない。デジタル機器に囲まれた生活をしていても、私たちの体内の仕組みは昔から変わらないのだから、納得だ。とはいえ、現代生活には「照明」「スマートフォン」「パソコン」などの人工の光もある。
――安河内さん「そこが問題なのです。1日中家の中にいるときに、あたり前のように朝から晩まで明るいままの照明を浴び、眠る直前までパソコンやスマートフォン、ゲームなどをしてしまうと、脳も体も休まるタイミングがなく体内リズムのズレ、引いては睡眠の質の悪化を招いてしまいます」
目から脳に入った光が、休むヒマなくエンジンをふかし続けてしまうということらしい。これではいつかエンストしてしまう。
――安河内さん「そうなんです。そのためにも、1日の中でどういう光で生活しているかを見直すことが大切です」
見直すのは光を浴びるタイミングだろうか?
――安河内さん「『光を浴びるタイミング』と『光の色』、『行動』も見直してください。たとえば日中は活動的になるように体の仕組みが出来上がっています。それなのに、学校や会社が休みだからとカーテンを閉めて光を浴びずに寝ていたり、逆に体がリラックスしたいタイミングに日中のように明るく青白い光の中で活動をしたり、スマートフォンやゲームなどの光刺激を受けてしまうのはダメです。光を浴びるタイミング、光の色、行動の『3つのズレ』が体内リズムのズレにつながり、睡眠の質の低下、身体の不調やストレスを引き起こす引き金になってしまいます」