変わる社会を常にキャッチ 次世代リーダーの理想像青山学院大学陸上競技部 原晋監督(下)

青山学院大学陸上競技部監督 原晋氏
青山学院大学陸上競技部監督 原晋氏

上意下達が当たり前の旧態依然としていた大学スポーツ界で、青山学院大学陸上競技部の原晋監督が進めた改革は従来の手法とは一線を画していた。営業マン時代に培った独自のアプローチで選手を強化。指導者としての評価もさることながら、陸上界にとどまらない発信力や明るい個性で異彩を放ち、「大学駅伝界の異端児」と呼ばれることも。最近は青学大を常勝軍団に仕立てた経験を社会に還元するべく、将来を担う人材の育成にも力を入れる。

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――青学大陸上部は順調に成長してきたように見えます。

「そんなことはありません。陸上部だけでなく、私自身も失敗を繰り返してきました。中国電力時代に全日本実業団対抗駅伝に出場した経験があったので、そのトレーニングのノウハウを青学大に当てはめれば成長できると信じていました。ただ、いきなりトレーニングさせたので、負荷が重すぎて疲労がたまって、大事な時期に多くの選手が故障してしまいました」

「合宿でも実業団的な発想を持ちこみ、ストレスがたまる大部屋ではなく、プライベートを守れる1人部屋にしましたが、チームの一体感は醸成できませんでした。まだ選手が自主性を生む土壌ができていない状態だったんですね。これでは逆効果。ただ、その失敗があるから学びがある。失敗をどんどん繰り返して人間は成長するものだと思います。僕からすれば、失敗を恐れて何もしないことが失敗。リーダーにはそういう心構えが必要だと思います」

――毎年、箱根駅伝前にユニークな作戦名を公表しています。その狙いは。

「2013年の大会からですかね。最初にやったときには誰からも注目されませんでした。始めた理由は毎年12月に開かれる箱根駅伝の記者会見が笑いもなく、つまらなかったからです。せっかくPRできる良い機会があるのに、うまく使えていないと思いました。当時はチームも弱かったので、せめて注目してもらいたかった。結局、勝たないとクローズアップされないんですが」

「15年の『ワクワク大作戦』は初優勝したこともあって爆発的にヒットしました。作戦名は駅伝本番の3週間前のチーム状態を端的に示している。もちろん、過度な緊張感をほぐして、チームの結束力を強くする効果も狙っています。日ごろは明るい選手でも、多少は緊張感が生まれる時期なのでリラックスさせる。学生たちは『また監督が何か言っているよ』と思っているかもしれませんが、本番までの3週間で皆の心がひとつになります」

「今年の『やっぱり大作戦』は自然と湧いてきました。それまで結果が出ていなかったのですが、やっぱり4年生は強かったと思ってほしかった。最近はネタがなくて困っていたのですが、11月下旬に行う恒例の千葉の富津合宿で思いつきました。自信があるときほど自然と出てくるものですね」

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