組織の成長は4段階、サーバント型が目標

――強豪校に成長するにつれて、監督と選手の関係が変化していきましたか。

「組織が成長していく際には、4つのステージがあります。チームの成熟度によって、監督と選手の関係性や接し方を柔軟に変えていく必要があります。最初は指導者が命令して自分の意のままに動かす君臨型です。土台を築くために細かく教え込んでいく。次に、監督がいくつかのグループの代表に指示を出して、メンバーに伝えていく指示型になります。それが定着すれば、監督が方向性を伝えて部員が一緒に考えて進んでいくステージ3に移行します。最後の段階は監督がサポート役に徹して選手の自主性とチームの自立を促すサーバント型です。当然、監督1年目と今では、指導方法やコミュニケーションの取り方が全く違っています」

2015年の第91回箱根駅伝で初の総合優勝を果たした

――15年に箱根駅伝で初優勝して4連覇。大学長距離界を代表する立場になりました。

「毎年優勝争いができる現在のチームは4つのステージでいうなら最終形にいます。こちらがあれこれ言わなくても、意識の高い学生たちが自ら考えて取り組んでくれる。私の仕事といえば、練習したくてたまらない学生を止めるくらいです。基本的には私は選手を褒めることばかりしています。選手の上に立つのではなく、寄り添って支えていく姿勢でいます」

「選手の成長を促すために、私なりのアプローチを工夫してきました。例えば、個々の選手にとって、実現できる半歩先の目標を設定します。それをグループで議論して管理し、成功体験を重ねていく、といったやり方です」

――そうした考え方につながった経験はありますか。

「私の高校時代、駅伝強豪校といわれる広島の世羅高校での生活が大きいです。当時の世羅高校はステージ1の君臨型の要素しかなかったと思います。とにかく厳しかった。何も考えずに上級生や指導者がいうことに『はい、はい』と従うばかりの抑圧された3年間でした。一生懸命取り組みましたが、結果として陸上以外は自分に何も残っていなかった。その反動か、大学時代は本当にちゃらんぽらんな生活を送りました。両極を体験し、学んだことが素地となっているのではないでしょうか」

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過去の実績より、ポジティブさで判断