臨時休校や外出自粛などによる「コロナ・ストレス」に、児童・生徒らU22世代やその家族は、どう向き合えばいいのか。専門家への電話インタビューの3回目は、山梨大学教授の中村和彦(なかむら・かずひこ)さん(60)。遊びを通じて色々な運動を経験することが子どもの心身に欠かせないと説き続け、体の成長を促す「36の動き」を提唱。子どもに人気の楽曲「パプリカ」のダンスも監修している。
――長期の休校・休園による子どもへの影響をどうみていますか。
「私の専門は運動、体育だけど、真っ先に気になるのは心の面だ。知識の習得が遅れるとか、体力が落ちるといったことよりも切実。大人と同じように子どももストレスや不安を抱えており、それを大人がちゃんと受け止めて対応しないといけない」
トレーニングではなく「遊び」

――運動能力の低下を心配する必要はありませんか。
「休校が半年に及ぶようなことになれば、それなりの手を打たないといけないが、今の段階では心配しすぎない方がいい。それに健康のためには、適度な運動、バランスのよい食事、十分な睡眠、排せつの4つの習慣の連鎖が大事で、運動だけ気にしてもだめ。よい連鎖はストレスを減らし、免疫力も高める。これは大人も同じだ」
――自宅で体を動かす際のポイントは。
「『スポーツ』とか『トレーニング』なんて考えず、体を使うこと自体が面白いという感覚をつかむことだろう。その喜びを増幅する方法はズバリ、だれかと一緒に遊ぶことだ。例えば音楽に合わせて踊る楽しさは、きょうだいやお父さんお母さんと一緒なら倍増する。みんなの動きがシンクロする感覚は、子どもにとって面白いんだよね」
「『パプリカ』のダンスでは、上手にバランスをとったり、スムーズに移動したりするのに必要な基本的な動きのうち、二十数種類を経験できるようになっている。この4月から山梨放送(甲府市)の番組や動画サイトで公開が始まった『コロナに負けるなダンス ゴリラッパンダ』の監修では14種類を取り入れた。1分半ほどだが、かなりアップテンポで、いい運動になる」
――運動が苦手な親はどうしたらいいですか。
「それでも一緒にやってみる。うまくできなかったら親の威厳が保てない、なんて思わないこと。親が上手に踊れるなんて、子どもはみじんも思ってないから、むしろ親に教えてくれる。子どもだけが主人公になるんじゃなくて、子どもが親を主人公にさせてあげる、そんな役割の逆転だって、子どもは面白く感じる」
「余談だけど、子どもの宿題をみない親が増えていて、自分が問題を解けないから、という理由が多いようだ。だけど子どもは親が一緒に宿題に向かってくれることがうれしい。『お父さんには難しいけど、おまえはできるのか』と言えばすむ話も、避けてばかりいたら『本当はできないんじゃないの』と疑われるだけだろう」