伝統の技と先人の情熱 ぬくもり感じる木造の橋10選

■6位 桃介橋(長野県南木曽町)310ポイント
資材運搬、大正時代に建設

1922年(大正11年)、木曽川の水力発電開発に力を注いだ電力王・福沢桃介(ももすけ)が資材の運搬用に架けた巨大なつり橋。「大正時代にここまで長い木造のつり橋を建造した技術がすごい」(依田さん)。中央部にはトロッコのレールの痕跡が復元してある。「軌道橋であった当時の姿に想像力を膨らませると楽しい」(山脇さん)

川幅が広い所にあり「木曽川の清流と白い岩石、山々が調和した絶景」(小塩さん)。5月の連休明けから8月上旬まで修理で通行禁止となる。

(1)247.8メートル(2)JR南木曽駅から徒歩約5分(3)http://www.town.nagiso.nagano.jp/kankou/midokoro/nagiso/midokoro_38.html

■7位 神橋(しんきょう)(栃木県日光市)300ポイント
朱塗り、聖地の表玄関に

日光二荒山(ふたらさん)神社が所有し、聖地・日光の表玄関にふさわしい朱塗りの木橋。重要文化財で、同神社の本殿とともに世界遺産に登録されている。10位の猿橋と同様に「基本的には橋脚が不要なはねばし」(谷川さん)。

現在の姿になったのは江戸時代の初期とされる。「橋桁が両岸に差し込まれたカンチレバーという工法で、当時の大工技術の高さに感心する」(佐々木さん)。「日本三奇橋」に数えられることもある。「蛇が姿を変えて現れたという伝説があり、凜(りん)とした空気が漂う」(王さん)。5月6日まで閉鎖中。

(1)28メートル(2)JR日光駅から徒歩約20分(3)http://www.shinkyo.net/shinkyo.shtml

■8位 河童橋(長野県松本市)290ポイント
上高地周辺の山々と調和

上高地のシンボルで観光の拠点。「木製のつり橋は穂高連峰など周囲の山々との調和が美しい」(太田さん)。名前の由来は諸説あるが、芥川龍之介が小説「河童」で河童橋を描写しており、「訪れれば小説に興味を持ち、読みたくなる」(王さん)。

冬場は登山の覚悟が必要だが、「人が少ない雪景色の河童橋は穂高連峰とともに絶景」(依田さん)。上高地は4月17日に開山し道路は開通しているが、5月6日までは上高地に向かうバスや現地の観光施設などは休業中。

(1)36メートル(2)アルピコ交通上高地線新島々駅からバスで65分(マイカーでは入れない)(3)https://www.kamikochi.or.jp/

■8位 祖谷(いや)のかずら橋(徳島県三好市)290ポイント
ギシギシ揺れてスリル満点

秘境、祖谷渓に架かるつり橋。ケーブルにツル植物のシラクチカズラを巻いて安全性に配慮。3年ごとに架け替える。「木々に囲まれて野性味があり、人工的な橋と異なる魅力がある」(太田さん)。板木の隙間が広く「眼下の川がよく見えてスリル満点」(森川さん)。

「日本三奇橋」の一つとされ、国指定重要有形民俗文化財。「ギシギシと揺れる橋を、手に汗握って渡る経験は子供の記憶に残る」(王さん)。中学生以上は550円、小学生は350円。5月6日まで休業中。

(1)45メートル(2)JR大歩危(おおぼけ)駅からバスで約30分(3)https://miyoshi-tourism.jp/spot/iyanokazurabashi/

■10位 猿橋(山梨県大月市)250ポイント
4層のはね木で支える

「日本三奇橋」の一つに数えられる。橋脚を使わずに両岸から張り出した4層のはね木で支える特殊な構造は「まるで小さい家のようで楽しい」(山脇さん)。「雨による腐食を防ぐ小さな屋根が独特の雰囲気を醸し出している」(森川さん)

7世紀ごろ、猿がつながり合って対岸へ渡る姿からヒントを得た伝説が名前の由来という。浮世絵師の歌川広重もこの橋を描いた。「江戸時代から奇橋として知られ、大月観光とセットで楽しめる」(小塩さん)。現在の橋は1984年に架け替えた。

(1)30.9メートル(2)JR猿橋駅から徒歩15分(3)https://otsuki-kanko.info/category/content-page/view/31

まちづくりに活用 伝統技術を次代に

木橋は強度を高める伝統的な技術が独自の造形美を生み、木のぬくもりや柔らかさが水辺の景観を引き立てる。2017年からは建設技術や維持管理の伝承、木橋を生かしたまちづくりについて専門家が議論する「全国木橋サミット」が開催されている。初回は3位に入った「鶴の舞橋」がある青森県鶴田町で開かれた。19年は「錦帯橋」(1位)がある山口県岩国市で開催。今年は11月に「こおろぎ橋」(4位)がある石川県加賀市で開かれる予定だ。

木橋は建設費、維持費が高く、水害で鉄橋などに架け替えられることも多い。6位の桃介橋は老朽化で一時は廃橋寸前となったが、地域の保存・活用の声で公園とともに復元して整備された。

現在は休館しているが、江戸東京博物館(東京・墨田)には江戸時代の実物の半分を再現した日本橋が展示されている。「真下から構造を直接見られる貴重な現場」(木橋技術協会の谷川充理事)という。外出自粛が続くが、木橋は写真を見るだけでも地域の人たちの思いがわかるようで何だか楽しい。

■ランキングの見方

数字は専門家の評価を点数化。名称(所在地)(1)全長(2)アクセス(3)情報サイト。写真は2、6、10位三浦秀行撮影。1位岩国市観光振興課、3位鶴の舞橋観光ガイドの会、4位山中温泉観光協会、5位島田市観光協会、7位日光二荒山神社、8位(河童橋)松本市アルプス山岳郷提供、8位(祖谷のかずら橋)三好市観光協会。

■調査の方法

人が通れる全国の木橋から専門家の協力で26カ所をリスト化。技術の高さや造形の美しさ、周囲の景観などの観点から専門家が1~10位までを順位付けし、編集部で集計した。(大久保潤)

■今週の専門家

▽植野芳彦(富山市政策参与)▽王麗華(いこーよ広報室)▽太田哲也(阪急交通社国内仕入二課長)▽小塩稲之(日本観光文化協会会長)▽佐々木貴信(北海道大学大学院教授)▽谷川充(木橋技術協会理事)▽森川勝仁(アーバンパイオニア設計社長)▽山脇裕(特殊高所技術課長)▽依田正広(橋梁写真家)▽渡辺浩(福岡大学工学部教授)=敬称略、五十音順

[NIKKEIプラス1 2020年4月25日付]

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