営業職から木工職人に 無からアイデアを形にする魅力

日経ARIA

ものづくりの楽しさを地域で伝える

木工職人以外にも水上さんにはいろいろな顔があります。まず、夏休みに開催する木工教室の先生。「お子さんの参加が多いですね。桐の板と糸ノコを使い、自分で描いた絵に沿って切り、パズルに仕上げます。一緒になって夢中で作っている親御さんもいます」

「たこ作りの先生」にもなります。近隣の春日部市などには、江戸時代から大だこを作って上げていた歴史があります。水上さんは地元の「みさと凧の会」に所属しており、年に7回ほど地域の小学校でたこ作りの講座を開催。工房では、名前を入れて贈答などに使う縁起物の「祝い凧」を受注製作しています。

「今は何でもお店で売っていて、身の回りにものがあふれているので、それらを実際は誰かが作っているんだということが分かりにくいですよね。子どもたちに、自分の手でものを作る楽しさや大切さを知ってもらいたくて取り組んでいます」。ほかにも、市が開催する「放課後子ども教室」では、小学生を見守りながら一緒に遊ぶスタッフとして土曜日に活動。得意の中国語を生かして市の施設でボランティアで中国語を教えたり、地域に住む中国人の生活相談に乗ったりと、地元に溶け込んだ活動を続けています。

木工教室で教える作品。子どもたちが自分で描いた下絵に沿って糸ノコを使い、フォトフレームにもなる木のパズルを作る
木の切れ端を生かしたいという発想から生まれた、無塗装の木の玩具「おとぎの国の積木ちゃん」。全103個のパーツでいろいろな作品がつくれる。2013年の「グッド・トイ」(芸術と遊び創造協会)に選定された

早くきれいにどう作るかを考えるのが楽しい

これまでに作ってきた作品の数と多様さには驚かされますが、木工技術はいまだに勉強中という水上さん。自分の中でまだ難しいと思うことは「まず、刃物の研ぎですね」と言います。「今は使い捨ての替え刃式のものが多いんですが、職人ならやっぱり研がなきゃと思っているんです。そこはこだわっているのですが、まだ思い通りにぴしっと研げません」

作る際も、100%の仕上がりと思うものはなかなかできないそう。「もちろんしっかり仕上げてお渡しをしますが、自分の中では『ここがもう少し』ということはありますね」

「家具は、最終的にちゃんと使える形に完成すればいいのですが、その中でどう早くきれいに作るかを考えるのが楽しいですね」という水上さん。「次回はこうすればもっと早くきれいにできるな、早くこれができる仕事が来ないかな」といつも考えているそうです。

(取材・文 秋山知子=日経ARIA編集部、写真 吉澤咲子)

[日経ARIA 2020年2月20日付の掲載記事を基に再構成]

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