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営業職から木工職人に 無からアイデアを形にする魅力

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日経ARIA

手の技と身体感覚から生まれる唯一無二の仕事。「手しごと」を生業に選んだ女性の日常、仕事との出合い、世界観とは。

埼玉県三郷市で木工工房を営む水上(みずかみ)由貴さん(46歳)は、メーカーの営業職として働きながら木工を本格的に勉強し、退社して5年後に独立。アイデアを生かした注文家具や木の玩具などを製作する一方、ものづくり講座の講師など、地域と人に関わる活動を続けています。そんな水上さんに手しごとの魅力について聞きました。

◇  ◇  ◇

埼玉県三郷市の郊外、幹線道路から脇道を少し入ったところに「ゆき工房」の看板が掛かる建物があります。建物の外には修理中の椅子が置かれ、建物の中には大きな木材や工具が整然と並びます。

木工職人の水上由貴さんがここに工房を構えて15年目になります。1人で営む工房ですが、通りがかりにのぞいていく人、仕事の合間におしゃべりに来る近隣の人が多いそうです。この日も、水上さんの「木工の師匠」である竹之内満さんが軽トラックで訪ねてきました。

この工房ではオーダーメードで、ハウスメーカーの新築住宅やリフォーム向けの作り付け家具や、キッチンメーカーがシステムキッチンなどと合わせて顧客宅やショールームに納める家具を製作しています。ほかに、一般のユーザーからの注文家具も作っています。顧客の要望を聞いて図面を描き、切削、組み立て、塗装や彫刻も。家具以外に、木材を使った内装、額縁、玩具など様々なものを手掛けています。

家具は「箱もの」(収納家具)、「板もの」(天板)、「脚もの」(テーブルの脚や椅子)に分けられますが、水上さんは何でもこなします。一番自分らしさが出ると思うものを尋ねると、「箱ものでしょうか」と水上さん。「収納を考えるのが昔から好きでした。勉強机の引き出しの中をお菓子の箱で仕切って、どうやってきれいに入れようかとよく考えていましたね」。オリジナル作品で人気があるのは、ティッシュやメガネなど小物をしまえる引き出しが付いたダイニングテーブルだそうです。

現場の営業経験が木工の仕事に生きる

水上さんは大学を卒業した後、システムキッチンのメーカーに就職。「当時、文系の女性が配属されることが多かった人事部や総務部にはあまり興味がなくて、面接では『営業をやりたいです』と希望しました」

入社してみると、女性の営業職はほぼ自分1人。大手ハウスメーカーの担当になり、新築の戸建てに納入するシステムキッチンの受注から、現場への搬入、据え付けの管理まで一切を任されました。

現場監督と工期の打ち合わせ、配送の手配や、据え付け工事を頼む職人の手配はもちろんのこと、「システムキッチンにはサイズが大きいものもあり、実際に運び込めるかどうかの確認が重要です」。現場の前の道に大型トラックは入れるか、小型でないとダメか。品物を運び込むときに、玄関を通れるか、階段を曲がれるかなど、すべて事前に寸法を確認しておく必要があります。1つでも確認が漏れてその日に搬入できなければ、顧客の引っ越しの予定などにも影響し、一大事になります。

「現場への納め方を営業のときに全部経験したことが、今は役立っています」。おかげで、大型家具の搬入でトラブルは一度もないそうです。

師匠との出会いでものづくりの道へ 職人として独立

営業職だった当時、納める新築住宅の設計に合わせた特注品の製作がときどきあったと言います。顧客の要望や現場の寸法を元に図面を描き、木工所に発注をしていましたが、その度に「自分でも作ってみたいなあ、と思っていました」

子どものころから絵を描いたりものを作ったりするのが大好きだった水上さん。たまたま知人に「木工をやってみたい」という話をした際に紹介されたのが、師匠の竹之内さんでした。仕事を続けながら2週間に1度、土曜日に竹之内さんの工場に通って学び始めました。

キッチンメーカーに4年ほど勤めた後に退社。「師匠のところに行き始めてから、いずれは木工で独立したいと思うようになっていました」。会社を辞めて、まずは以前から興味を持っていた中国語を学ぶために、1年7カ月の語学留学で北京へ。「いい機会なので、中国の家具の工場もいろいろ見て歩きました」。帰国後は再び竹之内さんの工場でさらに腕を磨き、2005年に自分の工房を立ち上げました。

どうやって実現するか、1から考えることも

既製品で満たせない使い手のニーズにぴったり合わせられるのがオーダーメードの醍醐味だと言う水上さん。安い家具が豊富で手軽に入手できる時代であっても、オーダー家具を求める人は必ずいると言います。

食器棚であれば、依頼主が普段どんな食器を使っているのか、お皿のしまい方は重ねるのか、立てて並べるのかなどを詳細に聞いて寸法を考え、引き出しや金物の提案をします。テレビ台なら所有しているDVDの枚数を聞き、最適の収納量に設計します。

ときには、どうやって実現したらいいかを1から考えることもあります。工房の前を通りかかった人から、クルマの荷室に愛犬が乗れる台をぴったりに作ってほしいという依頼を受けたり、曲面の壁に作り付けのわん曲した収納家具を製作してほしいと頼まれたり。「いろんなことをやってみると、それが経験になって思わぬときに役立ったりするんですよね」

ものづくりの楽しさを地域で伝える

木工職人以外にも水上さんにはいろいろな顔があります。まず、夏休みに開催する木工教室の先生。「お子さんの参加が多いですね。桐の板と糸ノコを使い、自分で描いた絵に沿って切り、パズルに仕上げます。一緒になって夢中で作っている親御さんもいます」

「たこ作りの先生」にもなります。近隣の春日部市などには、江戸時代から大だこを作って上げていた歴史があります。水上さんは地元の「みさと凧の会」に所属しており、年に7回ほど地域の小学校でたこ作りの講座を開催。工房では、名前を入れて贈答などに使う縁起物の「祝い凧」を受注製作しています。

「今は何でもお店で売っていて、身の回りにものがあふれているので、それらを実際は誰かが作っているんだということが分かりにくいですよね。子どもたちに、自分の手でものを作る楽しさや大切さを知ってもらいたくて取り組んでいます」。ほかにも、市が開催する「放課後子ども教室」では、小学生を見守りながら一緒に遊ぶスタッフとして土曜日に活動。得意の中国語を生かして市の施設でボランティアで中国語を教えたり、地域に住む中国人の生活相談に乗ったりと、地元に溶け込んだ活動を続けています。

早くきれいにどう作るかを考えるのが楽しい

これまでに作ってきた作品の数と多様さには驚かされますが、木工技術はいまだに勉強中という水上さん。自分の中でまだ難しいと思うことは「まず、刃物の研ぎですね」と言います。「今は使い捨ての替え刃式のものが多いんですが、職人ならやっぱり研がなきゃと思っているんです。そこはこだわっているのですが、まだ思い通りにぴしっと研げません」

作る際も、100%の仕上がりと思うものはなかなかできないそう。「もちろんしっかり仕上げてお渡しをしますが、自分の中では『ここがもう少し』ということはありますね」

「家具は、最終的にちゃんと使える形に完成すればいいのですが、その中でどう早くきれいに作るかを考えるのが楽しいですね」という水上さん。「次回はこうすればもっと早くきれいにできるな、早くこれができる仕事が来ないかな」といつも考えているそうです。

(取材・文 秋山知子=日経ARIA編集部、写真 吉澤咲子)

[日経ARIA 2020年2月20日付の掲載記事を基に再構成]

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