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落語会相次ぎ中止でライブ配信 若手に加えあの師匠も

立川吉笑

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NIKKEI STYLE

コロナ禍。あらゆる落語会が中止になって丸1カ月が経った。今回はこの1カ月を通して僕が感じたことを書いてみる。

3月上旬は1カ月くらいの自粛でなんとかなるだろうと、この事態を軽く想定していた。自分の中で潮目が変わったのは3月末の小池百合子・東京都知事の記者会見。それを受けて土日の落語会がまずはことごとく中止になった。その時に、自分なりに少しコロナウイルスについて調べてみて、どうやら当面は落語会の開催は難しい。しかもそれが低くない確率で半年とかもっと長く続くことが予想できた。そこから今後の動き方について真剣に考えるようになった。

「配信で得る収入」に自分で上限

3月の段階で動きの早い何人かの落語家が「テレワーク落語会」などを実行していたけど、その頃は自分としてはそこまで必要性を感じていなかった。急いで自分が何か落語に関するコンテンツを発信しなくても、すでに世の中にはCDやDVD、ネット動画などありとあらゆる名人の落語が残っているから、落語ファンを楽しませるための素材はたくさんあるだろうと。

それが例えば半年なり1年なり、長期にわたって落語会を開催できなくなるのであれば話は変わってくる。まずは生活費を稼がなくてはならない。少しは貯蓄もあるけど半年生き延びるのは残念ながら無理だ。また、おこがましい言い方だけど、ひょっとしたら何人かにとっては「立川吉笑の落語を聴く」ということが嫌なことを忘れられたり、癒やしになったり、楽しい気持ちになったりするきっかけだったかもしれない。1カ月くらいだったら「自粛期間が過ぎ去った後にまた落語会でお会いしましょう」と思えたけど、半年とか1年というスパンになるのであれば、気晴らし程度かもしれないけど、自分の芸を求めてくれている人には届けたい、そう思った。

4月に入って土日だけでなくありとあらゆる落語会は中止になる中、僕はいくつかの有料動画配信を始めた。有料にしたのは、癒やしを提供する目的なら無料にすべきだけど、その前に今後も落語家としての活動を持続できるように最低限の収入を確保しなければならないと考えたからだ。活動自体が継続できなければ癒やしを提供することもできなくなる。

一方で落語界の経済が停滞しているということは同様にお客様の経済も停滞している。全世界に発信できるネット配信とはいえ、現実的な購買層はそもそも自分を応援してくれている濃いファンに他ならない。つまりは母数が少ない。そこへの負担が大きくなりすぎるとすぐに持続できなくなってしまうから、自分の中で「配信で得る収入」の上限目標を決めた。具体的には月に12万円。それ以上は稼ぎすぎないことをルールに定め、これまでの活動からおおよその購入者数を予想して、12万円÷購入者数の値から販売価格を決定した(例えば購入者が倍に増えたら販売価格は半値で済むから1人当たりの負担は減ることになる)。

結果的には良くもあしくも購入者が予想を大きく超えることはなかったので、予定通り12万円ほどの収益を配信で得た。これで家賃も光熱費も払って何とか生活を維持できる。問題なく落語家を続けられる。

4月の中ごろになって、目に見えて多くの落語家がSNS(交流サイト)での発信など、コンテンツ配信に取り組むようになった。思っていたよりも落語会の中止が相次ぎ、これがしばらく続くとなると、ただ待機しているだけだとまずいことになる焦りや不安もあるのだと思う。

失うものの少ない若手による配信コンテンツが乱立する中、印象的なのはこれまでおおよそネットとはかけ離れたアナログなイメージが強かった師匠方の配信も少しずつ増えてきたことだ。特にアナログなイメージの強かった柳家三三師匠が真っ先に4月から毎週1回、ちょっとしたトークとたっぷり渾身(こんしん)の一席を務める配信を開始されたのには驚いた。橘家文蔵師匠はご本人だけでなく、豪華なゲスト真打ちとさらには若手の一席まである普段の落語会となんら遜色のないハイクオリティーな配信を、春風亭一之輔師匠は普段だったら寄席でトリをとっていた4月21日~4月30日の10日間、20時10分くらいから高座を無料生配信されている。

同じような時間帯に、魅力的な師匠方の配信が重なるようにもなってきた。つまりは配信コンテンツの供給過多が迫っている。そうなってくると、通常の落語会同様、配信でも人気のあるところに人が集まり、特に無名の若手のところには人が集まらなくなってしまう。そこを乗り越えるためにはそれぞれが工夫を凝らすしかない。

ライブ以外の発信も磨く

コロナウイルスの感染拡大がどれくらいで止められるのかは分からない。専門家の意見にもバラツキがあり、とにかく自宅待機し、医療崩壊のリスクを軽減するしかない。

それでも確実に分かっているのは、今回の騒動が収まったとして、もう以前の世界には戻れないということ。これはネガティブな意味だけじゃなくて、ポジティブな意味も含んでいる。新型コロナウイルス以外にも、今後もまた新たな感染症は我々の生活を脅かすことになるだろう。また感染症だけでなく大きな災害などで、人が集うライブ演芸ができなくなることもあるだろう。そんな時のために、今回の経験を生かし、落語家としてあくまでもライブ演芸に軸足を置きつつも、それ以外の発信方法はこれからも磨いておく必要がある。

とにもかくにも、落語を含めてあらゆるエンタメは皆様の生活基盤が確保されてこそ花咲くものだと思っている。まずは自分自身を、そして身近な人を守るためにやれることをやりましょう。

立川吉笑
 本名は人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。軽妙かつ時にはシュールな創作落語を多数手掛ける。エッセー連載やテレビ・ラジオ出演などで多彩な才能を発揮。19年4月から月1回定例の「ひとり会」も始めた。著書に「現在落語論」(毎日新聞出版)。
立川談笑、らくご「虎の穴」 記事一覧はこちら

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