リーダーは多様性で育つ シンガポールで活躍する女性

2020/4/28

日本人女性がシンガポールで要職に就き、活躍することについて「偶然ではない」とシンガポール国立大学経営大学院のローレンス・ウォン教授は指摘する。「画一的で多様化が遅れた日本ではガラスの天井がまだ厚い。企業は、日本以外の国・地域の方が女性リーダーを生かしやすいことを知っている」

スイス金融大手傘下のクレディスイス・リサーチ・インスティテュートが女性のリーダーシップを調査した「ジェンダー3000」2019年版がある。クレディスイスのリサーチ対象を中心に業種や地域のバランスをとった世界の3100社超が対象だ。経営幹部に女性がいる割合はシンガポールが23%で日本は3%だった。通信大手シンガポール・テレコムの最高経営責任者(CEO)や銀行のDBSグループ・ホールディングスの最高財務責任者(CFO)など同国では珍しくない。

ひるがえって日本。女性管理職やCEOも増えてはいる。目立ってはいるが、ごくわずか。今回の調査で対象とした日本企業175社の中では女性CEOはゼロだった。

日本企業で女性幹部の育成を阻む原因は何か。米経営コンサルタント、コーンフェリーのシンガポール法人アリシア・イー社長はインフラ不足を挙げる。家事を担うヘルパーや保育園など、働く女性が仕事に集中しやすくなるインフラが利用しにくい。「日本人に限らず、世界の多くの女性はキャリアのために家庭を犠牲にしない。だからこそインフラの水準で差がでる」

日本でも女性リーダーの育成は可能という。「企業が在宅勤務などフレキシブルな働き方を認めることで解決できる部分は大きい」と鈴木さん。テレビ会議など技術は十分ある。「上司が部下を信頼し技術を生かせば(女性の上級職昇進は)不可能ではない」

「女性活用の意義を企業は信じているだろうか」と問いかける3Mの中平さん

女性自身が得意分野を磨くことも重要だ。米工業用品・事務用品大手スリーエム(3M)の現地法人社長を経てコンシューマービジネス部門のアジア地域トップに就いた中平優子さんは「女性だから流れに任せていてはキャリア形成ができないと、自分で真剣に得意分野を作ってきた」。

第4次産業革命といわれるイノベーションの時代。「企業が成長するには変化が必要。変化は同質な人同士が話し合っても生まれない」。中平さんは3Mが多様性に取り組む理由を説明する。多様な視点を持つリーダーシップが必要な今。女性登用の手綱を緩めると、日本企業は自社の将来の成長機会を逃してしまうかもしれない。

積極登用だけで止めない ~取材を終えて~

シンガポールで女性が比較的進出しやすいのは、人材不足の裏返しでもある。女性や外国人という理由で排除する余裕はなく、その結果生まれた多様性は、グローバル企業がアジアの統括拠点に選ぶ理由の一つになった。今回取材した女性たちも、日本より小さなこの国での経験を「国際的な企業の幹部としてのキャリアに役立つ」と話していたのは興味深い。

日本で女性の層は厚くなった。しかし外資企業の女性登用の取り組みを聞くと、採用さえすれば女性リーダーが増えるわけではないと痛感した。企業は様々な面で変わる必要がある。例えば、新型コロナウイルス対策でテレワーク導入が加速している。危機が転じて柔軟な働き方が普及すると期待したい。

(シンガポール=谷繭子)

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