東京~新大阪1万円以下 新幹線チケットが異例の安値
値段の方程式
新型コロナウイルスが猛威を振るい、企業活動や流通・サービス業など国民の経済に大きな影響を与えています。身近な節約スポットである金券ショップも例外ではありません。
新橋の金券ショップ「ラッキーコレクション」で話を聞いてきました。店頭で価格が安定しているものと下落しているものの表です。
こちらを見ると商品券は安定しています。コンビニやスーパーで支払いに使え、おつりも出るので人気です。信販会社発行のギフト券はおつりは出ませんが、百貨店からスーパー・家電量販店と幅広く使えることから人気です。特に使い勝手のいい500円券は安定しているそうです。一方、値下がりが激しいのが新幹線回数券や株主優待券です。
ドル箱商品なのに……
お店の売り上げはどうなってるんでしょうか。ラッキーコレクションの担当者の話では今年1月は前年同月比25%減でした。この時期は中国が春節(旧正月)で大勢の中国人観光客がレジャーチケットを購入しますが、今年はコロナ発生の影響で観光客が激減したそうです。以後、月を追うごとに落ち込み幅が大きくなっています。
なかでも、金券ショップを悩ませているのが新幹線のチケットです。新幹線格安チケットや格安切符などと呼ばれることもありますが、基本的に金券ショップで販売している新幹線チケットは新幹線回数券をバラ売りしているものです。安定した需要が見込める、ドル箱商品です。
新幹線の利用客が激減
ところが、新幹線の利用客そのものが減ってしまいました。JR東日本は3月時点で特急、新幹線の利用者が70%減、JR東海の4月1日から15日までの利用客は85%減です。ゴールデンウイークの新幹線の予約はおよそ9割減少しています。
回数券の場合、いつでも使えるというわけではなく有効期限があります。有効期限が近づくと売値を下げるしかなく、在庫を抱えた金券ショップが投げ売りしている状態です。ラッキーコレクションでは東京~新大阪 指定(片道)が1枚9900円。東京~名古屋(同)が7450円です。それぞれ3000円、2500円下がっています。東京~新大阪で1万円を切っています。実質的に史上最安値となっています。東京~新大阪は平日はビジネス客、休日は観光・レジャー客でにぎわいます。回数券も「絶対に売れる」商品で、金券ショップにとって売れ残るという事態はかつて経験したことがないといいます。
金券ショップで購入した回数券は原則、払い戻しできないのもネックです。店頭に並ぶのはクレジットカードで購入した回数券がほとんどで払い戻す際には購入した際に使ったカードが必要になるなど、制約が多く、事実上不可能です。新幹線の回数券は行き帰りの区別もなく、自由席であれば割引率も1割程度と高めに設定されています。これが簡単に払い戻しできるとなると、通常の切符を購入する人がいなくなってしまいます。このため、払い戻しには制約が多いのです。
株主優待券も売れ行き不振
有効期限という点では株主優待券も同じです。使用期限が4月末、あるいは5月末期限のものが多いため、やはり店頭で値下がりしています。緊急事態宣言を受け、期限を数カ月延長した株主優待券もあるそうですがそれはほんの一部です。店頭だけでなくネットオークションにも出品して大幅値下げで売り切ろうとしている金券ショップもあるそうです。
JR各社の株主優待券の在庫を抱える金券ショップからは悲鳴も上がっています。新幹線回数券はゴールデンウイークには使えませんが、株主優待券は制限がありません。本来なら最も新幹線の利用者が増えるので、株主優待券が人気なんだそうです。しかし、今年はほとんど売れていません。
ラッキーコレクションは4月に入ってからは来客数が4分の1程度。購入する人よりも不要チケットの売却する人が増えていて全体的に在庫過剰な状況だそうです。担当者は「このままだと4月の売り上げは50%のマイナスとなりそうだ」と話していました。
もともと、交通各社が始めたネット予約など独自の割引サービスに押され、販売量が減っていた金券ショップ。テーマパークや映画のチケットも営業停止や外出自粛で売れ残る。金券ショップにとって新しいビジネスモデルに転換が迫られているが、あまりにも急激な市場の悪化に打つ手が見当たらないといった状況です。
(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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