公共交通というのは社会インフラですから、誰でも利用できるように基本的に価格を抑えなくてはなりません。収益は安定していますが、交通サービスだけで多くの利益を上げていくのはロジックとして厳しいものがあります。そのため、MaaSは収益性が悪いから、国の税金で支えようとか、やめてしまおうという話になりかねません。ビジネスとして考えると「移動」だけを切り出してMaaSとして提供するのは得策ではないと思います。

『Beyond MaaS 日本から始まる新モビリティ革命―移動と都市の未来―』(日経BP)

つまり、移動するためのコストはこれまで通り安価として多くの人に移動してもらい、移動した先や、その前後の体験価値でいかに価値を提供して収益を上げるか。周辺産業と組み合わせて考える、Beyond MaaSの視点が重要になってきます。

今、多くの鉄道会社は、鉄道と不動産開発や商業施設など複数の事業を組み合わせて利益を上げていますよね。MaaSでも、同じように融合を進めるべきでしょう。プラットフォームとして考えると、いつかは囲い込みが必要になるかもしれませんが、まだその段階ではありません。オープンにしていろいろな業種と連携していくことが大切です。そういう意味では、今のMaaSは階段の1段目を上がったくらいですが、たった1年足らずでここまで来たのは多くの関係者の努力によるところも大きいと思います。

異業種の知見が新たな可能性を切り開く

―― Beyond MaaSでは、あらゆる産業に新たなビジネスチャンスがありそうです。

これまで人の移動はコントロールできそうで、できないものでした。ところがMaaSによって移動関連のデータが集まり、コントロールできるようになっていく。外の産業でそれを使いこなしているビジネスモデルというのは、まだほとんど無いですから、その領域については完全なブルーオーシャンと言えるのではないでしょうか。

MaaS事業者が移動のプラットフォームを用意しようとしていますから、外の産業はそこに乗っかればいい。新規事業として参入しやすいのではないでしょうか。その参考として、本書では住宅・不動産、飲食・サービス、小売り、モバイル通信など、15種類の産業にスポットライトを当てて、豊富な事例を示しながら深掘りしています。

――その中には、ゲーム業界というのもありましたね。

はい。彼らはゲーム業界で培われた知見がありますから、その考え方をMaaSに生かすのは面白いと思います。例えば、一般的に都市交通で混雑を解消するには、道路を広げるか、通行料を値上げするなどしてコストを高めるしかないわけです。オンラインゲームでも同様に、初心者から上級者まで多くのプレーヤーが集まりますが、このときAI(人工知能)を使ってプレーヤーをうまくレベル分けして分散させるようなことをします。プレーヤー全員の満足度を高めながら、うまくコントロールするわけです。このようなゲームの考え方をうまく都市交通に適用できれば、画期的なシステムが生まれるかもしれません。

このように異業種の人たちが、それぞれの業界の知見を生かせるのもBeyond MaaSの魅力です。私たちMaaS側の人間はBeyond MaaSの世界にわくわくしていますが、異業種の人たちから見たBeyond MaaSは、もっと面白いんじゃないかと思います。

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あらゆる産業巻き込み、街の姿が変わる