スマホでリアル体験「新体感ライブ」 マルチ画面にVR

日経エンタテインメント!

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音楽市場において、ライブエンタテインメントの存在感が増し続けている昨今。NTTドコモが2019年1月にサービスを開始したのが、「新体感ライブ CONNECT」です。

2019年1月に「新体感ライブ」としてスタートし、20年1月から「新体感ライブ CONNECT」に名称を変更。アーティストとファン、ファン同士がつながるという意味を込めている

スマートフォンやタブレットを通して、どこにいてもライブをリアルタイムで楽しめる上に、見逃し配信も可能。また、今年の1月には、国内初の「8KVRライブ」の提供も発表されました。これまでの取り組みと今後の展望について、同社デジタルコンテンツ企画担当主査の駒野真以氏に聞きました。

聞き手は、MTVジャパンやユニバーサルミュージックなどで、次世代の“エンタテインメント×テクノロジー”の新規事業開発を担当してきた鈴木貴歩さんです。

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――新しいライブの視聴体験を模索していたそうですね。

駒野真以 1997年にNTTドコモに入社。2001年から音楽・映像コンテンツ企画やプロモーション、スマホ向け放送局NOTTVの編成業務に携わる。16年から現職(写真:佐賀章広)

「ライブ市場が活況ですが、皆が行けるわけではありません。チケットが取れなかったり、遠方に住んでいたりといろんな事情がありますからね。そこでライブの生配信と見逃し配信をパッケージ化したサービスを作れないかと考えたんです。私自身ライブが大好きなので、ライブ会場で見るのが一番ということは重々承知しています。しかし、ライブ会場での楽しみ方とは違った楽しみ方を配信で提供しようと、この約1年でサービスを進化させてきました」

――サービス当初からある「マルチアングル」「ARフィギュア」、そして昨年11月から導入した「TIG Live」がそうですね。

「マルチアングルライブは、最大で6アングルの映像を配信します。スイッチング映像や正面だけではなく、例えばステージの背後やメンバー固定カメラなどの設置も行い、『普段見られないアングルからメンバーの様子をずっと見られるなんて最高!』といったコメントをいただくことが多いです。あとアイドルの方の配信も何度か実施しましたが、やはり大人数グループはマルチアングルとの相性がいい。特定のメンバーを追い続ける『推しカメラ』や、メンバーのダンスやフォーメーション全体を俯瞰できる『ダンスカメラ』など、ファンの皆さんのニーズに合わせたカメラアングル企画を実施してきました。

TIG Liveは、リアルタイム動画の視聴中に出現するアイコンにタッチすると、メンバーのプロフィールが載ったHPや、着ている服のECサイトに飛べる仕組み。昨年11月のAKB48の柏木由紀さんのライブ生配信で初めて導入しました。MC中にグッズ紹介を行ったところ、ライブを視聴しながら多くの方にご購入いただけました。やはり、ライブの最中が一番熱量も高いんですよね」

――「ARフィギュア」は、アーティストグッズを進化させたような取り組みですね。

「ARマーカーがプリントされたグッズに、『新体感ライブ CONNECT』アプリを起動したスマホをかざすと、CGのメンバーが浮かび上がってきて動きます。ロックバンドの[Alexandros]さんの場合、各メンバーの缶バッジから本人たちが登場して曲を演奏し始めます。また、缶バッジを動かして、自分の好きなフォーメーションに組み替えるといった遊び方もできます」

舞台やスポーツにも可能性

――3月18日に開催したSixTONESとSnow Manが出演するイベントの生配信では、「8KVRライブ」機能が初お披露目されたんですよね。

「今回は、イベントオリジナルデザインのVRグラス付きで販売して、まるで会場の最前列にいるかのような、没入感のあるVR映像が楽しめました。また、視聴者が見ている方向の映像だけを高画質、他の部分を低画質で配信することで、4G回線のスマホでも問題なく見られました。今春から始まる5Gが普及していけば、『8KVRライブ』の画質がさらに良くなったり、マルチアングルの数が増えるなど、視聴環境はもっと向上するでしょうね。

音楽ライブ以外のイベントも既に行っており、可能性を感じています。例えば舞台では、ある出演者がセリフを話しているシーンの時に、他の出演者がどんな表情や演技をしているかが見られる点などに評価をいただきました。スポーツでは、プロレスの生配信が好評を得ています。今後も様々なジャンルのコンテンツの配信に挑戦していきたいと考えています」

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スズキの視点

駒野さんはNTTドコモの中でこうした音楽プロジェクトの中心にいる方で、まさに“キーパーソン”。そして一貫しているのが、テクノロジー活用を目的とせずに“体験から逆算する”という点。そうした考え方にアーティスト側も共感するため、このような豪華なアーティストたちとコラボできているのではないでしょうか。このサービスは私が提唱する5G時代のエンタテインメントの特徴の1つ、“アーカイブ性”を実現しており、5G普及期には大人気が故に“当たり前”の体験となると考えます。

鈴木貴歩
ParadeAll代表取締役。“エンターテック”というビジョンを掲げ、エンタテインメントとテクノロジーの幸せな結びつきを加速させる、エンターテック・アクセラレーター。エンタテインメントやテクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、カンファレンス主催、海外展開支援などを行っている。

(構成 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2020年4月号の記事を再構成]

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