2020/4/21

それが巡回型検診車の導入などにより、乳がんと子宮頸がんにかかる年間医療費は18年度に13年度より約6割減った。同時に男性の受診も増えたため、胃がん、肺がんなどを含め医療費全体が3割減ったという。「早期発見の遅れが、医療費に反映されていた」(鈴田さん)とみている。

健康保険組合連合会の調査では、健保連に加盟する組合の総医療費におけるがんの割合は1割程度を占めるという。組合の財政悪化の一因となっている。健保組合に詳しい大和総研の内山和紀主任コンサルタントは「医療費を抑える早期発見は、健保財政の健全化にも有効」と指摘する。

女性の健康意識の向上を図る企業もある。「充実した仕事ができていますか? プライベートな時間を楽しめていますか? 笑顔で毎日を過ごせていますか?」――。日本航空が18年に発行し、女性社員に配る32ページの冊子「ウィメンズヘルスガイド」は、健診の大切さなどを訴えかける。健診での視力や血圧の数値、歯科や婦人科の検診受診日など3年間の記録を書き込め、女性特有の不調や疾病、症状を20~30代、40代以上に分けてアドバイスしている。

JALは女性特有の健康リスクを理解できるように医師監修の冊子を発行している

同社は20年度までの中期経営計画に社員の健康を掲げる。「グループ社員の半数近い女性の活躍は未来につながる。健康意識の向上と婦人科検診の機会を拡充することは、経営としては最重要課題」(健康管理部の黒川隆一部長)

「女性は30代からホルモンバランスの変化による婦人科系の疾患リスクが始まるが、仕事や育児で忙しかったり、知識がなかったりで検診を受けていないケースも少なからずある」と黒川部長。羽田空港では専用施設で年間150回の受診機会があるが「受診者が少ない。意識を高める必要がある」(同社)と話す。

女性の就業者が3000万人を超え、全体に占める割合も44%に高まった今。女性社員の健康を支えることは、その能力を最大限に引き出し経営に生かすためにも、企業にとって重要な課題になった。

早期発見 自治体検診も勧めて ~取材を終えて~

国立がん研究センターによるとがん患者の3割が働く世代で発症している。生涯でみれば2人に1人が罹患(りかん)する「身近」な病。「まずは健康が基本。元気で生き生きと働いていただくこと」。取材した企業の担当者は全員、こう切り出した。最初は当たり前のように思ったが、取材を進めていくうち言葉の重みが増していった。

自分自身はがんの経験はないが、がんに限ってはとにかく早期の発見が将来の快復へのカギになる。定期健診の大切さも、改めて認識した。医療費の負担が難しい企業はどうすればいいのか。大和総研の内山和紀主任コンサルタントは「健康保険組合で負担できないときは、自治体のがん検診の利用を従業員に勧めてほしい。小さな取り組みで社員の健康を維持できる」と話している。

(杉山麻衣子)