新型コロナとの戦い 議論・判断の記録残してこそ

東京都公文書館は都の行政文書だけで約95万件を所蔵している(2020年4月、国分寺市)
東京都公文書館は都の行政文書だけで約95万件を所蔵している(2020年4月、国分寺市)

「1世帯あたり布マスク2枚を配布」「人との接触は7~8割減を要請」。政府は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための対策を毎日のように打ち出してきました。個別の対策は誰がどのような情報や判断に基づいて決めたのでしょうか。疑問を解き明かすには政府が開く様々な会議の記録が残っていなければなりません。

政府は3月10日、新型コロナへの対応を公文書管理法のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定しました。国民の生命や財産に重大な被害が生じるような事案が対象で、指定により「政策を決定する会議」で誰が何を発言したかを記録することが求められます。

専門家の集まりなどたくさんの会議が開かれる中、しっかりした議事録が残るかどうかには注意が必要です。ガイドラインは政策の決定を伴わない会議については議事録の作成を求めていません。各府省庁が「この会議で政策は決めていない」としてしまえば、十分な記録が残らない恐れがあるのです。

そもそも歴史的緊急事態かどうかにかかわらず、閣僚が出席する会議や専門家会議に相当する審議会などは議事録の作成が義務づけられています。情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「政府は議事録を作成する会議の範囲を明確にした上で、確実な記録の作成のために会議を録音してほしい」と求めています。

新型コロナ対策では厚生労働省が横浜港に入ったクルーズ船の検疫に関わるなど、地方自治体も含め各地で様々な対応がとられています。現場には必要な記録をとる余裕がない可能性もあります。公文書管理に詳しい龍谷大の瀬畑源准教授は「電子メールのやりとりなど、後で検証できる資料は多くある。政府は『まず資料を捨てるな』という姿勢を現場に示すべきだ」と話していました。

「桜を見る会」の招待者名簿が廃棄されるなど、政府の公文書管理のあり方はたびたび問題となってきました。新型コロナ対策では検査の方針から休業要請の範囲に至るまで、個々の政策が人々の生活を左右する度合いは格段に大きくなります。「責任の所在をはっきりさせ、間違いを速やかに改めるためにも正確な記録が必要だ」と情報公開クリアリングハウスの三木さんは指摘しています。

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