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窪田良氏は慶応大学医学部での研究や虎の門病院での臨床経験が豊富だ

窪田良氏は慶応大学医学部での研究や虎の門病院での臨床経験が豊富だ

実績のある研究者・眼科医だった窪田良・窪田製薬ホールディングス最高経営責任者(CEO)が2000年、米ワシントン大学へ研究の場を移したのは、当時勃興しつつあった再生医療を研究するためだった。網膜疾患に特化したバイオベンチャーを立ち上げたのは、渡米からわずか2年後。研究成果を委ねて、医薬品メーカーに新薬を開発してもらうというセオリーに従わず、自ら起業する道を選んだのは、これまで臨床医としては治せなかった病を治療できる新薬を作りたいという強い思いに導かれたからだ。

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傷ついた網膜の再生に役立つと期待される神経幹細胞は様々な脳の神経に分化していく元の細胞だ。目の再生を実現する第一段階として、窪田氏は神経幹細胞だけを取り出す技術を確立しようと考え、同大で研究に取り組んだ。

多様な動物から網膜を採取し、神経細胞を培養する。そこから神経幹細胞だけを取り出すにはどうするか。実験を繰り返し、試行錯誤を重ねた。普通なら1週間で死滅してしまうが、ある時、1年たっても生き続けている神経細胞を見付けた。

「なぜかはよく分からなかったのですが、誰かが栄養を与え続けていた細胞が偶然にも生き続けていました。とても驚きましたが、すぐに死滅していた細胞が安定的に使えるなら、様々な病気の中枢神経に関わる薬の開発に利用できる可能性があると思いました」

細胞で病気の状態を再現し、それに薬をかけることで、どのような薬効があるかを検証できるのでは――。この時、初めて「起業できるかもしれない」と思ったという。当時は再生医療の実用化が予想していた以上に困難で技術的なハードルが高かったこともあり、再生医療で目の病を治す道筋にはかなりの時間がかかることもみえてきていた。

大学発でバイオベンチャーを設立する構想を徐々に育み始めた。大学の同僚に相談しても、「バイオベンチャーはリスクが大きい、やめておけ」と諭された。顧客になりそうな企業や研究者に話しても「面白そうだけど、どうですかねぇ……」と反応が鈍かった。技術は有望だと思っていたが、資金を集めるめどは全くなかったという。

大学にも相談したところ、「1年間は研究者として働きつつ、起業の可能性を探ってみてはどうか」との提案を受けた。「研究者として働き続けながら、起業に踏み出すべきか否かを考える猶予を与えてもらったのは、非常にありがたかった」と窪田氏は当時を振り返る。

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