エアロゾル状態で3時間、プラスチック上では3日間感染力を維持
得られた結果をまとめたのが表1です。

人工的に浮遊させ続けたエアロゾル中のSARS-CoV-2の感染力は、著者らが観察した3時間でやや低下したものの、高く維持されていました。SARS-CoV-1でも結果は同様でした。
SARS-CoV-2は、各種表面の中では、プラスチック(ポリプロピレン)上で最も安定していました。感染力は経時的に低下していましたが、72時間後でも感染力を保ったウイルスが表面に存在していました。しかし、96時間後に回収したウイルスの感染力は、検出限界以下でした。
ステンレス(ステンレススチール)の上では、どちらのウイルスも48時間後までは感染力を維持していました。一方、銅板(純度99.9%)では、感染力のあるSARS-CoV-2は4時間後まで、SARS-CoV-1は8時間後までしか検出できませんでした。
気になるのは厚紙です。SARS-CoV-1は8時間後以降には検出できなくなったのですが、SARS-CoV-2は24時間後まで感染力を維持していました。
続いて、ウイルスの感染価が半分になるまでの時間を調べたところ、2種類のコロナウイルスの間で差が有意になったのは厚紙上とステンレス上で、いずれも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の方が感染力を長く維持していることがわかりました(表2)。

2つのウイルスがエアロゾル中と物質表面上で感染力を持っている時間は、厚紙上を除けば、大きな差はありませんでした。SARSと比べると、新型コロナウイルスによる肺炎の患者の増加が著しい理由は、これ以外のウイルスの特性にあるのかもしれません(参考記事「新型コロナ、無症状の感染者からも発症者並みウイルス」)。
medRxiv(メドアーカイブ)は、米Cold Spring Harbor研究所と英国の医学系雑誌出版社BMJ、米Yale大学の3機関が共同で運営するWebサイトで、新しい知見を迅速に共有し、フィードバックを受けるためのプラットフォームとして無償提供されています。公開されているのは、専門誌に投稿された、査読(※)前の論文です。新型コロナウイルスに関する情報の速やかな公開は、medRxivによって可能になったといえます。
※査読とは、研究者が執筆し専門誌に投稿された論文を、その分野の研究を行っている専門家が評価、検証し、誌面に掲載するかどうかを判断する審査の過程をいう。

[日経Gooday2020年3月17日付記事を再構成]